たくさんの花で埋まってしまったような墓もあったが、よく見ると68歳の女性が、今年亡くなっているからです。
万聖節が終わったころの晩秋の墓地は、捧げられた菊やシクラメンの花に溢れ、その上に枯れ葉が散りつもったりしていて、とても美しい。
日本の寺の墓は「○○家の墓」と刻まれているだけで、実にすっきりとしている。それに比べると、フランスの墓地の墓には、いくつも墓碑銘が置いてあったりする。「私たちの愛する父へ」などという出来合いのものから、切々と、残された側の悲しみや良心の呵責(かしゃく)をはき出しているものも多い。日仏の気質の違いかもしれないし、仏教とキリスト教の死に対する考え方の違いかもしれない。散歩がてら墓地を訪れて、そんな墓碑銘を読んでいくのはなかなか興味深いのだ。(真)
構成:佐藤真
文・写真:中川さやか、仲野麻紀、佐藤真