「生活満足度ナンバーワンの町」。これは5年ほど前、オヴニーが大西洋に臨む港町ナントを特集した時に使った惹句。この15年来、毎年人口が約1%ずつ増え続けるナントは、今も元気のある町だ。なぜ大躍進が続いているかといえば、ひとつは文化が町の活性化に役立ってきたということがある。実際、毎年〈ラ・フォル・ジュルネ音楽祭〉、〈ナント三大陸映画祭〉、〈現代アートビエンナーレ・エスチュエール〉と、魅力溢れるイベントが開催されている。 そして昨年からはさらに一歩進み、「町おこし」と「文化」が有機的に手を結んだ斬新なプロジェクトがスタート。「レ・マシン・ド・リル」は、旧造船所跡を使い、都市の風景に溶け込んだ柵のない都市型遊園地を実現するという壮大なプロジェクトだ。だが遊園地といっても、ありきたりな乗り物はない。例えば乗客を乗せて歩く、機械仕掛けのビッグな周遊ゾウさん。こちらはすでに運行中で、マスコミでもずいぶんと話題だ。続いてさ来年に登場するのが、海洋世界をイメージした高さ25メートルのメリーゴーラウンド。ここで使われるマシーンの数々は、現在すでにアトリエ内で試運転中のものが見学できる。さらに2013年には、大木の上にとまった鳥の羽で、乗客が乗った籠が上下するという謎のアトラクションも完成予定だ。 このプロジェクトの特筆すべき点は、 巨大マリオネットで有名な大道芸カンパニー〈ロワイヤル・ド・リュクス〉が協力することで、詩情溢れるレトロフューチャーな世界観を実現したこと。そして一過性のイベントではなく、文化の力で永続的な町のシンボルを産み出したことだろう。とにかく眺めているだけでニッコリしてしまう夢のある町おこし計画。現在、観光客も右肩上がりで、立役者ゾウさんの表情も、心なしか嬉しそうなのである。(瑞) Les Machines de l’île : Les Chantiers, |
ゾウさんは高さ12メートル。まばたきもする。 ノロノロ歩きでロワール中州の広場を約45間かけて練り歩く。
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