パリの東、ヴァセンヌの城と森に囲まれた広場。ここで毎月第一日曜日に、200から400台もの優美なクラシックカーが勢揃いする。さながら屋根のない自動車ミュージアムだ。
約25年前、クラシックカーの愛好家たちが、定期的に内輪で集うようになったのが始まり。個性あふれる車の響宴(きょうえん)は、通行人の目を楽しませ、年々ファンも増えていった。1998年からは警察署の助言もあり、クラシックカーの価値をアピールするアソシエーション〈Vincennes en anciennes〉として、再出発。現在会員は約千人。50歳代以上の男性が多いが、女性や学生もいるという。
フランスでは19世紀末に鉄骨建築が栄え、エッフェル塔やグランパレを誕生させた。そしてクラシックカーは、産業技術が生み出した鉄文化のひとつ。「だからクラシックカーは、走る文化遺産。そもそも車の発祥はフランスとイギリスだから、れっきとしたヨーロッパの文化でもある」と語るのは、アソシエーション代表のミシェルさん。彼の愛車は、イギリス産トライアンフTR6だ。
「クラシックカーの魅力は、もちろんフォルムの美しさがあるが、あくまで『運転する人間が主体』というところも大きい」とのこと。現在主流の車は、パワーステアリング付きで、ハンドルは軽くて運転はしやすいが、反面、車に走らされている感が強いのだとか。
もうすぐ、クラシックカーがパリを横断する恒例の人気イベント〈Traversée de Paris〉が開催される。朝8時にヴァンセンヌから出発する約650台の車とバイクが、バスティーユ、コンコルド、ヴァンドーム広場などを通り、ムドンまで大パレード。最後は芝生の上で巨大ピクニック! パレードを間近で見学できるレトロバスも運行されるので、車がない人も気軽に参加できる。「日本人のために30年代製のバスを用意するからぜひ予約して参加してね」(瑞)
●クラシックカーが大集合するのは、毎月第一日曜日の9hから12h30迄。Esplanade du Château de Vincennes。
●〈Traversée de Paris〉
毎年1月と7月末に開催。今年の夏は7月28日(日)。見学者用レトロバス(7月12日までに要予約)は、Esplanade
du Château de Vincennesから8hに出発し、12h頃ムドン天文台に到着。乗車は大人5€/12歳以下無料。予約をするにはサイトから申し込み用紙をダウンロード。
www.vincennesenanciennes.com/
城にクラシックカーが映える。© Hervé Mazzocu
会の代表のミシェルさんと 愛犬フィガロ。
恒例の〈Traversée de Paris〉の日は、 こんなレトロバスに乗ってパリの名所をめぐりながら パレードを見物できる。