スティーブ・ジョブズの 手紙の入手は難しい。
「大砲の音や老兵たちの叫び声が聞こえた気がしました」。ジャン=エマニュエル・ローさんは、ナポレオンの直筆の手紙を初めて手にした時の興奮を今も思い出す。歴史上の人物の直筆手紙に魅せられて早30年。当初はサンジェルマン・アンレーで古切手やカードを売る店を営んでいたが、大好きな直筆手紙の販売に集中しようと、10年前にパリに移ってきた。文学者の記憶が刻まれるカルチエ・ラタンは、ギャラリーに理想的な場所だろう。「でもこの界隈も、最近は既製品の洋服屋ばかりでイライラする。どこも売ってるものが同じさ」。貴重な一点ものばかりを扱うローさんは、ちょっとご不満そうだ。
店内は、ロベスピエール、ダントン、ルイ15世、セリーヌ、サンドら錚々(そうそう)たる人物の手紙が常時1万点も揃う。品揃えのためには定期的にオークションに足を運ぶほか、よく持ち込みもされるという。「先週もヴィクトル・ユゴーの手紙を持ち込んだマダムがいました。1万5千から2万ユーロの価値があると伝えたら驚いていました」。客層は収集家や研究者、投資家と様々。気のきいたプレゼントとして購入する人も多い。3万ユーロを越す高価なものもあるが、平均は200から300ユーロ。中には50ユーロくらいの手紙もあるというから、一般人とて決して手が出ないわけではない。「ここ最近、人気が高いのは画家の手紙。イラストが添えてあり見栄えもいいからね」。かく言うローさんご自身のお宝も、ジヴェルニーに引っ越してきたばかりで上機嫌な様子の、クロード・モネ直筆の手紙だとか。
現代人の手紙も扱うことがあるが、50年後の価値が読めないため、俳優の手紙はあまり興味がないという。「でも法王ブノワ16世やコフィ・アナン前国連事務総長の手紙なら是非手にいれたい。手紙を書くのもパソコンが主流になってきたから、現代人の直筆を入手するのは逆に大変なこと。クロード・モネより、スティーブ・ジョブズの手紙を入手する方が、ずっと難しいでしょうね」(瑞)
「価値が高いのはラブレターや 歴史的事件に関わるものですね」
これが ナポレオンの髪の毛だ!
画家のミロとゴーギャンの直筆メッセージ。
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