オヴニーの友人・吉武美知子さんが2019年6月14日、がんのため息を引き取った。リベラシオン紙は「30年来パリに住み、日仏の作家性のある映画の架け橋に」と追悼。オヴニーでは88年以降(吉)の署名で映画紹介を執筆。初原稿はジャック・ドゥミの『想い出のマルセイユ』評(下写真)。映画愛たっぷりに新鮮な映画情報を届けた。
雑誌に寄稿し、合作のコーディネートに尽力、映画の買い付けもサポートした。レオス・カラックス、ニコラ・フィリベール、フランソワ・オゾン、ジャン・ユスターシュ、ジャック・ロジエらが日本で愛されたのは彼女の功績が大きい。
映画史には監督とプロデューサーの黄金デュオが多々いるが、吉武さんの場合は諏訪敦彦監督。『H story』で現場に参加後(劇中で通訳中の吉武さんの姿も)、『不完全なふたり』『ユキとニナ』の製作に参加。2009年に自身の製作会社設立後も監督と信頼関係を深め、ジャン=ピエール・レオー主演の美しくもスリリングな秀作『ライオンは今夜死ぬ』を完成に導いた。他にもポン・ジュノ、レオス・カラックス、ミシェル・ゴンドリーによるオムニバス『TOKYO ! 』、カトリーヌ・カドゥー監督『黒澤 その道』、黒沢清監督『ダゲレオタイプの女』を製作。
【諏訪敦彦監督と製作した作品】
スクーターでパリを駆け抜け、夏は海水浴、冬はスキーを楽しんだ。スキー好きは友人のジャン=ピエール・リモザン監督譲り。先日もカンヌに来ていたが、周囲に病気の素振りは見せず。今年の最高賞パルムドールは彼女が才能を見込んだジュノ監督が受賞。それは“吉武プロデューサー”の鑑識眼を証明するものにもなった。
葬儀にはフィリベール監督が弔辞を読んだほか、J=P・レオー、ギヨーム・ブラック、イポリット・ジラルドら映画人が多数参列。メルシー、吉武さん。あなたの不在を実感することができません。でも素敵な笑顔と映画は忘れません。(瑞)