怪優と諏訪監督との出会いから始まった映画。

『ライオンは今夜死ぬ』

© Shellac Distribution

映画製作は長距離走だ。1月3日公開の諏訪敦彦監督『ライオンは今夜死ぬ/Le lion est mort ce soir』は、 2012年秋のジャン=ピエール・レオと監督の出会いが起源だ。

フランソワ・トリュフォー『大人は判ってくれない』(59) に14歳で主演してから、ヌーヴェル・ヴァーグの象徴として歩んだレオの人生も70歳に手が届くところまで来ていた。老いた少年、未完の怪優、主題としてのレオがそこにいた。「一緒に映画を作ろう」という電流が二人の間を駆け巡った。しかし、いかに?監督の試行錯誤が始まる。アイデアが固まらないまま時が過ぎる。2014年秋、レオが初来日し監督と再会する。歌を映画のモチーフに使えないかと考えた監督は、レオに「何か歌える歌はあるか?」と訊く。そこで彼が歌い出したのが「Le lion est mort ce soir(ライオンは今夜死ぬ)」だった。

一方、監督は日本で《こども映画教室》の講師を務めていた。小学生から希望者を募り、毎回20人くらいの子どもたちが4班に分かれ、各班が3日間で映画を1本創作するワークショップだ。既成概念にとらわれない子どもたちの自由な映画作り、彼らの活き活きした表情、監督はこれを自分の映画に取り込めないかと思い立つ。南仏グラース近郊で20人ほどの子どもと第一回ワークショップを開いたのは2015年の暮れ。3回目のワークショップにはレオを招き、初めてレオと子どもたちが出会った。

さあ素材は出揃った。ここからどんな映画を紡ぎ出すか…。諏訪敦彦の映画は、書かれた物語を俳優に具現してもらうというフツーの映画とはちょっと違う。粗筋のようなものの中身を作り上げてゆくのは出演者でありスタッフだ。撮影は2016年の夏、南仏の眩い太陽の下で敢行された。

こうして出来上がった作品は観客に委ねられる。あなたがこの映画をどう評価してくれるのかは分からない。筆者はプロデューサーとしてこの映画を完成させられたことを誇りに思い、幸せを感じている。(吉)