暗い話題ばかりの日本で、岡田武史氏(41)は、依然、時の人だ。
「指導者みずから浮かれている場合じゃないんで、CM出演も全部お断りしました。でも、あまりに美化され過ぎで怖いんですよ、最近…」
ユーモアを忘れぬバランス感覚に勝れた愛称・岡チャンも、さすがに昨年12月3日にはキレた。
「組分け抽選会のために降り立ったマルセイユ・マリニャーヌ空港で、日本のテレビの報道陣が僕を見つけた途端、フランス人の子どもを突き飛ばすわ、お客さんを押し退けるわで、もう同じ日本人として恥ずかしくなって、思わず怒鳴ったんです」
さすがにもう “韓国は故意に日本に負けた”と言う人はいないものの、今度は”ジャマイカは弱いらしい”、”いや、強いらしい”と、またぞろ具体的根拠の希薄な風説が妖怪のように駆け巡っている。
「結局、我々代表チームだけに限らず、日本人全体にいちばん欠けているのは、<判断力>なんですよ。それは、自分の意志で選択する人間を創るという教育の基本が、学校や家庭でうまくなされていないこととつながっているんだと思います」
彼がそのことに気づいたのは、指導者としてのイロハを92年から1年間ドイツで学んでいたときだという。
「僕とフランスとのかかわりは昔、初めて観光したとき、モンマルトルでいかがわしい兄ちゃんに『シャチョー!』と呼ばれた記憶や、12月の抽選会の帰りに
2~3時間パリに立ち寄った程度ですけど、パリの人には好印象を持っています。在住の日本人アーティストはみな”サッカー嫌い”かもしれませんね。でも
サッカーも一つの文化です。6月は、たとえそのころ僕が監督をクビになっていても(笑)、ぜひトゥールーズ、ナント、リヨンで闘う日本代表を応援して下さ
い」
(マ)