Commerce駅界隈(15区)
1980年代初頭に来仏し、人気のクスクス屋を営むアルジェリア人のサラさん。店があるのは、住宅地が広がるコメルス駅界隈。パリ15区はパリで最も人口が多く、日本人の住民も多い。彼がパリジャンになってから、これまで6、9、10、17区のレストランで働いたことがあるが、今の15区が一番心地よいという。「ここには『村のエスプリ』が残っています。私は人間が大好きなので、ご近所同士が気軽に声を掛け合える雰囲気が嬉しい。パリの他の区ではなかったことなのです」
それは故郷アルジェリアにも、ちょっと似ているという。通りの人がみな知り合いで、いつも声を掛け合って暮らしていた、首都アルジェの生活である。
サラさんが店をオープンしたのは1992年。だからもう20年以上も、この界隈を定点観測している。「以前はもっと事務所やアトリエが多かった。最近はますます住宅地っぽくなってきました」。今は古くからの住民と、住みやすさに引かれて移り住んできた新しい住民とが、ほどよくミックスされている。家賃は跳ね上がる一方だが、公務員や低所得者の人が住むHLM(公営低家賃住宅)もあり、住民の顔ぶれは多彩といえる。サラさんの店にも、アジア、アフリカ、ヨーロッパと、国際色豊かな常連さんたちが毎日やって来るのだ。
お気に入りのコメルス界隈のようだが、不満がないわけではない。「20時以降は道が閑散として、街に活気がないのです。劇場の一つでもあればいいのだけれど」。実は地域の歴史をひも解くと、すぐ近くのクロワ・ニヴェール通り55番地には、かつて大きな劇場と映画館があった。今は普通のアパルトマンに変わってしまっている。
最後にイスラーム信者でもあるサラさんに、シャルリー・エブドの襲撃事件について聞いてみた。「シャルリー・エブドは買う気はしませんが、殺人は私たちの教えと正反対の振る舞いで、絶対に許せないこと。フランスでは権利が大切にされているので、私はここで気持ちよく生きています」(瑞)
●Le Vent de Sable
「お客の95%が常連」とは決して誇張ではない、サラさんの人気クスクス屋。魚が多く野菜少なめのチュニジア、こってりとした味のモロッコにくらべ、野菜たっぷりでブイヨン多めがアルジェリアのクスクス。子羊が入ったクスクス・メシュイは14€。12h-15h/19h-23h。無休。
31 rue Mademoiselle 15e
01.4828.8555
● Atelier Garnero
創業40年。カーテン、タペストリー、椅子やソファ、マットレスなどの製作、補修を請け負うアトリエだ。欧州の有名メゾンの生地を豊富に扱う。親切なアンヌさんと犬のイリーさんがお客様をお出迎えする。
月~金9h-12h30/14h-18h30、土9h-12h。
23 rue de l’Abbé Groult 15e 01.4531.4056
●Le Paradis des Gourmands
教会のすぐ近く、コメルス通りの商店街にオープンして11年になるパン屋さん。全品店で手作りするパンはどれも美味。店主ヴァネッサさんがアンティル諸島出身なので、グアバのパテなどエキゾチックな味わいもお得意だ。
火~日7h-20h30。月休。
93 rue du Commerce 15e
01.4828.6586
地下鉄8番線が通るコメルス駅。
駅前商店街は教会のある広場へとつながる。
駅前にある公園のキオスク。
クロワ・ニヴェール通り。劇場や映画館があった。