Gare du Nord界隈(10区)
デザイン事務所atelier[jes]の共同創設者として活躍する気鋭のデザイナー、サミュエル・ミスレンさん。木や金属使いが得意で、家具や展示会用の装置など手広く手がける。今年は、エルメス財団が主催の若手デザイナー対象のコンクールで1位を獲得。まさに順風満帆の活躍ぶりだ。
パリには二つのインド人街がある。一つはパッサージュ・ブラディがあるフォブール・サンドニ通り近く。もう一つは北駅からシャペル駅の間。サミュエルさんが住むのは、この二つめのインド人街の方だ。彼がこの地域に移り住んできたのは偶然。日本人の彼女がもともと住んでいたアパルトマンに、彼が引っ越ししてきたからだ。この界隈の住民となり5年ほど経つが、意外にも住みやすいという。
アルザス出身の彼によると、時にパリジャンは融通が利かないところがあるが、この界隈の人々は違う。移民が多いからか、みなざっくばらんでオープンマインド、温かい人が多いのだ。自然と近所づきあいも活発になる。「ニューヨークに似て、性格がシンプルな人が多いんだ」
スーパーにはこと欠かないから、買い物も便利。インド系のスーパーは、オクラや大根といった和食に使える珍しい野菜を売っているのもいい。インド料理のレストランはおいしくて安いから、つい注文し過ぎてしまう。
治安は悪そうに見えるが、恐れることはないという。「スリや空き巣はたしかにあります。でもコミュニティの連帯感が強く、何かあればみなで助け合っている」。例えば最近ホールドアップの事件が発生したが、すぐにインド人たちが外に出てきて、事なきを得た。彼らの連帯感の網の中で、住民も守られていると感じられるのだ。
ただし問題が一つ。「大通りはよく渋滞が起きて、クラクションの音が響き渡る。騒音はひどいよ」。でも幸いサミュエルさんのアパートは、中庭に面しているから、家の中は大丈夫。彼女との愛の巣までは、手ごわい北駅の騒音も入り込めないようである。(瑞)
●Krishna Bhavan
100%ベジタリアンのインド料理レストラン。サミュエルさんの好物は、ホウレンソウとジャガイモが入った北インドのカレーAloo Palak Masala(5.5€)。辛くなくマイルドな味わい。道を挟んで向かいの21番地やパリ5区にも支店が。
10h-23h。 無休。
24 rue Cail 10e 01.4205.7843
●VT Cash and Carry
日用品から食料品までとにかく品揃えが豊富。「パリ最良のインド系スーパーマーケット 」と称されることもあるくらいで、インドやスリランカ人が祖国の味を求めて通ってくる。オクラや大根など日本人に嬉しい食材が見逃せない。
9h-21h。 月休。
11-15 rue du Cail 10e 01.4005.0718
●アルザス通りの階段
東駅からの線路に沿ってあるアルザス通り。隣接する東駅と北駅という二つの駅をつなぐ通りで、その東駅側に52段の壮麗な階段がある。その美しさから、映画『アメリ』をはじめ、様々な映画の撮影に登場してきた場所でもある。
北駅
サミュエルさんの背景は東駅。
コンクールで1位をとった 作品『La Capsule Ventilée』Marc Domage © Fondation
インド人街のスーパー。