◎太田奈菜江(36歳、仙台市)
お菓子職人になりたかった太田さん、お菓子をやるならフランスに行こうと考えたのは短大1年生の時だった。渡仏費用を捻出するためにバイトを始め、短大で栄養士免許を取った後も、さらにバイトを続け、3年間で360万円を貯めた。
1999年2月に渡仏。ブルゴーニュの語学学校に半年通い、9月の新学期からパリに移動し、念願のル・コルドン・ブルーのパティスリーコースに登録した。料理の勉強に励む毎日だったが、洗濯機もなく、トイレも共同の13区の屋根裏部屋での生活だった。トラウマになってしまったネズミとの闘い、水道管の破裂など、「毎日がアクシデントだった」。それでも「あの貧しさを経験できたことは宝」。ル・コルドン・ブルーのコースを修了すると、毎日のようにPain au chocolatなどを買って食べていた近所のパン屋さん「Le Grenier à Pain」でスタージュを始める。
渡仏から2年近く経ち、貯金も底をつきかけ、極貧生活にも疲れてきたころ、日本に戻ることにした。
2001年に日本に戻ると、仙台市内のケーキ屋で働き始めたが、その間に、以前からも兆候があった小麦アレルギーがひどくなった。何人もの専門医にみてもらったが、どこへ行っても、仕事は辞めるように言われた。もともと皮膚が弱かったが、やりたいことと体力のバランスが悪かった。日本に戻って3年経っていた。悩んだ末に、料理教室や出張料理などで、働き方を変えることにした。
細々と仕事をしていた2007年、フランスで食べて好きになっていたベトナム料理を本場で食べようと、ベトナムに旅行に行く。そこで参加したベトナム料理教室でベトナム料理にさらに惹かれた。ベトナム料理も、フランスのお菓子と同じように、細やかで美しいと感じた。翌年、ホーチミンの料理学校に留学する。
学校では外国人は自分だけで、コミュニケーションもあまりとれなかったが、親切なベトナムの人たちに助けられ、半年の滞在でベトナム料理のコースを修了できた。
ベトナムから戻り、2009年に現在の料理教室を開いた。現在、おそらく東北で唯一のベトナム料理教室を営む太田さん、「フランスに行っていなかったらベトナムには出会わなかった」という。フランスに行っても食べたいのは、ベトナムでは実はメニューにない「ボ・ブン」、そしてフランスのパンで食べた方がおいしい「バインミー」だという。
フランスからベトナムに興味が移ったが、今はフランスのお惣菜屋さんで売られているような料理やサラダにも興味があるし、味噌づくりにも興味があるという。フランスからベトナム、そしてベトナムからまたフランス、あるいはまた別の可能性もあるかもしれない。太田さんの「台所」は楽しそうだ。(樫)
Après six mois dans une école de langue en Bourgogne, Nanae qui veut devenir pâtissière s’inscrit au fameux Cordon Bleu de Paris. Son cursus terminé, elle fait un stage dans une boulangerie. Deux années passent et ses économies épuisées, elle rentre au Japon.
Deux événements surviennent alors. Travaillant dans une pâtisserie à Sendai, une allergie à la farine se manifeste au point que tous les médecins lui déconseillent vivement de travailler comme pâtissière. Puis lors d’un voyage au Viêt-Nam, elle est séduite par la cuisine vietnamienne qu’elle avait bien appréciée lors de son séjour en France. Le moment est venu pour elle de changer de cap. Un an après, elle repart à Hô-Chi-Minh-Ville et s’inscrit dans une école de cuisine. Au bout de six mois, elle obtient son diplôme.
De retour à Sendai, elle trouve un local et ouvre sa « Salle de cuisine » pour donner des leçons de cuisine vietnamienne, mais aussi de pâtisserie française !