ジルの彼女マイウェンはミラを可愛がってくれるが、少々ありがた迷惑に感じる時もある。
例えばミラのダンス発表会があると、マイウェンはジルが仕事で来られなくても、一人でやってくる。一番良い席を陣取って応援するその姿は、本当の母親以上に母親らしくて複雑だ。
また私がお土産でミラに30センチ定規を買った時は、同じ日にマイウェンは高そうなケルト風の銀のペンダントをプレゼントしていた。喜ぶミラを横目に「私が去年あげた鹿ちゃんのペンダントはちっとも付けてくれないね」と憎まれ口を叩く私。まるで恋人にすねる浅まし女だ。数日後、リベンジというわけではないが、ミラに子供用の料理本をプレゼントした。そしたらすでに同じ本がジルの家にあるというので落胆。かえってミラが「もう一冊あっても便利だよ」とフォローしてくれたのも情けない。
そんな折、マイウェンが実家でミラを呼んで仮装パーティを開いた。マイウェンはミラに着物を着せたというが、後で写真を見せてもらったら、いかにも外国人が勘違いした舞子風ヘンテコ日本人娘だった。赤いおちょぼ口に髪にはかんざし代わりの箸。着物もどきの布を肩にかけている。すかさず「こんなの本当の日本人じゃないよ、ははは」と鬼の首を取ったように勝ち誇る私。こんなことで優越感に浸っているようでは、母親の座は相当に怪しいのである。(瑞)