ベタンクール疑惑。– (2)

 化粧品会社ロレアルの年間売上高は175億ユーロ。株はベタンクール一族が30%、スイスのネスレ社が29%所有。リリアーヌ・ベタンクール夫人(87)は94年、娘フランソワーズさんに持株の2/3、娘婿メイエ氏と孫息子に1/3を贈与し用益権を保持。月給100万€、09年の配当金1.75億€、10年間で4億€の所得・富豪税を払った。08年度税率引下げで 国が彼女に3千万€を返金しても国にとっては貴重な億万長者だ。
 ベ夫人の気前良さと老弱化につけ込み、夫人を手玉にとる写真家マリー=バニエ氏に「母親をとられた」と恨む一人娘と、姑に嫌われてきた娘婿。執事 B が盗聴録音したCDには、夫人の財産管理人ドメストル氏の言う未申告のスイス口座や、バニエ氏が包括受遺者となっているロレアル財団名義のアロス島、06年まで社長としてロレアルの世界制覇をなしたオーエン=ジョーンズ理事(夫人は1億?を贈与)とドメストル氏の親密な関係など、夫人をもちあげる3者と、のけ者にされる娘夫婦(二人とも理事)との対立が表出。
 調査班の尋問を受けた、夫人の前会計係チブさん(盗聴録音をデジカル化したコンピュータ技師の妻)は夫と共に08年に解雇されバニエ氏を憎む。彼女は数回の供述で、歴代大統領から大臣、ヌイイ市長時代のサルコジ夫妻、ヴルト夫妻までベタンクール宅の招待客の名をあげ、5万€ずつ彼女が銀行から引き出しては茶封筒に入れていた、07年3月○日、ドメストル氏が「大統領選のためヴルト氏(与党UMP財政部長・予算相)に渡すので15万€必要」とし、彼女は5万€しか引き出せず「残りはスイス口座の金で間に合わせる」と言われたと述べる。この供述はサルコジ大統領とヴルト現労働相を直撃、二人とも「虚言! 誹謗 !」と全面否定。チブさんは最終供述でサルコジなど特定氏名を打ち消し「多くの政治家たち」と言い直す。大統領は違法献金疑惑から逃れたが、追いつめられたヴルト労働相は7月13日、与党財政部長を辞任。
 娘フランソワーズさんは7月13日、クロワ検察長に母親に法的後見人をつけることを申請した。09年にも願い出たが母親は精神鑑定を拒否。今回も精神鑑定書がないことで却下された。
 7月16日、クロワ検察長はドメストル、バニエ、ベ夫人のゴゲル前弁護士、アロス島管理人ヴェハラノ4氏の取り調べを開始。ドメストル氏が「07年、フロランス・ヴルト夫人をベ夫人の財産管理役に雇ったのはヴルト予算相に頼まれたから」と供述し、同相が主張する「夫婦同士の職務を隔てる〈万里の長城〉」も崩れ、同夫妻がベ夫人の脱税に通じていなかったか同相の公権力の抵触・収賄容疑にもおよびそう。検察長と競い調査を進めるプレヴォ=デプレ裁判長は7月20日、チブさんを尋問。彼女は解雇時に夫人から40万€、フランソワーズさんからも同額の礼金を受けたと供述し複数の脱税容疑が発覚。多岐にわたる「大河」調査が続く。(君)