奥手なジルに新しい彼女ができた。だからミラもジルの彼女マイウェンに遊んでもらう機会が増えた。今ではミラはパパとママの家が別々に存在し、それぞれ違う生活があるという現実もそれなりに受け入れているようだ。「パリのカップル離婚率は5割」と聞いたことがあるが、周りでも離婚家庭の子は決して珍しくない。そんな子供たちの間では、余計な感傷は交えずに「私のまま母がね」「私のまま父がさ」などとクールなおしゃべりが飛び交うこともある。ミラも自分だけが例外ではないと悟るのだろうか。
マイウェンはガーデニングが趣味の家庭的な人で、ミラに花のお世話の仕方を教えてくれるらしい。私には決して教えられないことだし、こうやってミラが様々な形の愛情を受けて育ってくれるのならば、単純に嬉しい。だが最近、ミラがジルとマイウェンとバカンスから帰ってきた時のこと。ミラの前髪が異様に短くなっていた。マイウェンが親切で切ってくれたのだがどう見てもワカメちゃんの前髪。出発前、ミラの前髪はたしかに長めだったが、それは髪質を考え私がわざと伸ばしていたものだ。しょうがないので「前衛的! ヘップバーンもこんな前髪だったかも」と言ってはみたが、内心私は穏やかでない。なぜミラは前髪を元祖ママちゃんではなく他人に切らせたのか。こんな時、まま母候補への秘かな対抗心がないといえばうそである。(瑞)