スペクタクル風のミニ観光ツアーに参加するため、今回は、パリ観光の定番モンマルトルへと繰り出した。重要スポットを順に辿る途中で、役者たちが臨場感たっぷりに町の歴史をよみがえらせてくれるという。集合場所は市内で一番小さな広場Place du Calvaire(Calvaireはキリスト磔刑の地の意)。「モンマルトルの語源は、聖サン・ドニらが首を切られて殉教した丘Mont des Martyrsから来ています」。ガイド役アレックスくんが表情豊かに説明をはじめた。 ツアーは物語仕立て。伝説の美女ガブリエルを探す彼の目の前に、土地にゆかりのある人物が次々と現れ、美女探しのヒントを与えてくれる。モディリアーニ、アコーデオン弾き、大道芸人、怪しいイタリア人の泥棒。そしてついには着ぐるみのロバ人形まで登場する。ややあっけにとられていると、「彼もまたモンマルトルを代表する重要な存在ですよ」とアレックスくん。実は有名シャンソニエ〈ラパン・アジル〉の名物オーナー、フレデおじさんに飼われていた実在のロバなのだ。ロロくんという名のこのロバは、〈ラパン・アジル〉の歴史と芸術について興奮気味に語る。「ロバに芸術」とはミスマッチな気がするが、なんと彼は尻尾を筆にして『アドリア海の日没』という名作(迷作)を実際に残しているのだ。本品は1910年、有名サロンに出品され、ロバに描かれたとは知らなかった批評家らに支持されたのだとか。 そんな歴史のこぼれ話は、ベルエポックのモンマルトルを生き生きとよみがえらせてくれる。いつもは有名観光地然として厚化粧を施されたこの街が、急に親しげな素顔をのぞかせた瞬間だった。(瑞) Show Visite Paris (01.4454.8232)
|
ブドウ畑、ムーラン・ド・ラ・ギャレット、テアトル広場など重要スポットを1時間半で巡る。
|