桜は咲かぬとも、日本より半年早く新学期の季節が近づく。結局、突然舞い込んだ物件情報に乗じ、パリ内で引越しをすることに決めた。ミラは15区の公立小学校に入る。せっかく受験をした国立小学校は泣く泣く辞退した。
入学前にはいろいろ揃えるものがある。まずは仏版ランドセルともいうべき「カルターブル」。近所のモノプリに行ってミラに好みのものを選ばせると、あんまりうれしかったのか、入学前なのにお出かけごとに背負うように。他にも鉛筆、消しゴム、ハサミなどの定番文房具はもちろん必須だが、「アルドワーズ」という見慣れない物もある。これはペンで書いて消せるミニホワイトボードだった。ジルの時代はまだミニ黒板にチョークを使っていたとか。また教科書カバーも要る。日本と違って一年後には教科書を返却するから、キレイに使わなければならない。無料配布すればいいのにと思うが、ジルは「カバーをつけるのが新学期の重要イベントさ!」と妙に目を輝かせている。
いよいよ入学の日。やや大きめのカルターブルを背負ってミラは小学生になった。やはり学校前で記念撮影をする浮かれた親は私だけで、ついにミラに「ママ恥ずかしい」と言われる始末だ。記念セレモニーらしきものは一切なし。そして親たちはちょっと教室を見学すると、先生からは「授業が始まるから」と、すぐに教室から退散させられるのだった。(瑞)