エリゼ宮の記者会見から戻ったあくる日には、モーリタニアへ報道番組のために旅立つ。料理番組を手がけたかと思えば、サッカーの実況中継にくりだす。エリックさんは、テレビ番組の制作で、世界中を駆け巡る日々を、もう18年も続けてきた。「僕は仕事があるから、幸運な方のアンテルミッタン」というけれど、失業制度改正のせいで、不安定な状況にさらされている。「アパートを見つけるにも、ローンを組むにも、僕たちは失業者とみなされて、皆に二の足を踏まれるんだ」。芸術の向上のため、彼らフリーランスで働く芸能関係者の、待遇の改善を訴え続ける。 エリックさんは、時に自慢のハーレーで、時に徒歩でのんびりと、パリ市内を散歩するのが大好きだ。中でも、トロカデロからイエナ橋を渡って、エッフェル塔の足元へ、アンヴァリッドから河岸を通ってサンジェルマンへと向かう、L字型コースがお気に入り。そう、観光名所の王道である。「僕にとって、パリは魔法の町だよ」。シャンゼリゼ大通りのマロニエの並木道、セーヌ川に煌めく光の洪水、芸術橋に浮かび上がる恋人たちのシルエットなど。まるでドアノーの世界から飛び出したような、いきいきとした光景を目にすると、心がはずむ。「そんな使い古されたステレオタイプが、現実にそのまんま存在するパリって素晴らしい!」。そして「誰もが物語の主人公になりきれる」のがパリだという。 |
●Le loir dans la thiere 「まるで不思議の国のアリスの世界に迷い込んだよう」と、エリックさんが通うサロン・ド・テ。といっても店内は、雑然と壁にポスターが貼られ、年代も色も違うイスやソファーが所狭しと並べられ、親しみやすい雰囲気だ。キッシュやオムレツの軽食もいいが、ここでは紅茶と日替わりのデザートセット(9€)がおすすめ。メレンゲのレモンタルトや、じんわり甘みが広がるルバーブのタルトなど、20はありそうな自家製のパイやタルトは、いかにも素朴な祖母の味といった風味。 10h-19h。無休。 |
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ソルボンヌ広場のシンボルが消えていく。
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