Philippe Aubry 車載コンピュータシステム技師 ヴォジラール通りをひたすら歩く日曜日。

 「メトロ・ブロ・ドド(地下鉄・仕事・後は自宅に帰って眠るだけ…)」というフィリップさん。平日は、朝6時に起きて、ドゴール空港近くの仕事場に、1時間半かけて通勤する。以前はRER(郊外電車)内での読書が楽しみだったが、今は居眠りに費やされる。「単調な習慣の繰り返しに慣れてしまうことが、すごく怖いんだ」。正直いって、うんざり気味のパリ生活。「RERはストで止まってばかり。疲れるのは肉体的な面じゃなく、通勤地獄でむしばまれる精神だ」と訴える。フィリップさんの周りも、やつれた顔のパリっ子でいっぱいだ。
 休日は、そんな閉塞感から抜け出し「光を求めて」、パリの街へ向かう。雨の昼下がりも雪の夕暮れも、自宅のポルト・デ・リラから、左岸まで、お決まりのコースを辿って、5時間も6時間も歩き続ける。土曜日はモベールの道場で、合気道の稽古に精を出す。日曜日は、リュクサンブール公園から、パリ最長のヴォジラール通り(4360m)をひたすら歩き、コンバンション通りをぬけて、ジョルジュ・ブラッサンス公園へ向かう。
 道中の楽しみの一つは、大好きなパティスリーに寄り道すること。〈アオキ〉ではフォンダン・ショコラを、〈エルメ〉ではレモンタルトを、決まって購入する。新しい店を見つけても、横目に眺めて通り過ぎる。「馴染みのレストランに行けなくなるのは残念だからね」。週末の夜は自宅の階下にある、いつもの店で、いつもの席につき、いつもの料理を注文する。「この小さな習慣に、満足しているんだ。味がいいからじゃなく、僕の居場所を求めて、通い続けるんだよ」。孤独を感じる? 「それはノン」。
 語学を学ぶのが趣味。英語はもちろん、日本語やスウェーデン語など、5カ国語を自在に操る。「言葉を勉強することは、パリにいながら、世界に思いを馳せること」。目標の人物はテオドール・モノ。アフリカをはじめ、98歳の最期まで世界を旅した科学者だ。
 フィリップさんは、この5月、慣れ親しんだパリを発つ。かねてから希望していた、転勤願いが通ったのだ。パリを離れることで最も残念なのは、「築き上げた小さな習慣に別れを告げること」。行き先は東京。フィリップさんの目に、東京の街は、どのように映るのだろう?(咲)
●Parc Georges-Brassens
 15区の南端にある、緑豊かな公園。週末に開かれる古本市(土日の9h-18h)には、「昔の旅行記を見つけに行くんだ」とフィリップさん。1978年まで家畜解体所だった場所だが、今は時計台のある池を中心に、ぶどう畑やバラ園、マリオネットの芝居小屋などがあり、のどかな風景をつくっている。

104 rue Brancion 15e M。 Porte de Vanves


poisson
シャンゼリゼでお花見はいかが?

「世界一美しい通り」とフランス人が自慢するシャンゼリゼ大通りも、冬の間は街路樹が枯れ木になってどことなくわびしい感を免れない。5月に若葉が一斉に吹き出すのを待たずに、なんとかシャンゼリゼを春らしく装う手段はないか。そこで、日本びいきのシラク大統領が鶴の一声で決めたのが、日本のソメイヨシノの植樹だ。政敵であるドラノエ・パリ市長も、このアイデアには快く賛成したという。世界一美しい通りで世界一美しい花を愛でる…4月1日が見ごろのシャンゼリゼの桜を見に行こう!(し)