フランスのムスリム社会。

 世界のムスリム(イスラム教徒)人口は10億(20%)、9割はスンニー派、シーア派*は1割(イラン、イラク)を占める。フランスのムスリム人口は約500万、その半数は仏国籍者だ。現在彼らがいちばん恐れているのは、テロリズムとイスラム教の同一視による差別的偏見だろう。
 フランスのムスリム社会は60年代以降おもに旧植民地マグレブ諸国からの移民一世から始まる。70年代にルノー工場などのマグレブ系労働者たちが工場内に礼拝所の設置を要求したものだ。80年代以降はとくにエジプト同胞団系仏連盟(UOIF)が盛んにムスリム女子にべールの着用を勧め、イスラム教徒の先輩が落ちこぼれ少年の宿題をみてやったり、非行・麻薬に走った青少年をモスクに誘い若者たちの”イスラム化”を進めた。そのせいか今年は11月15日開始のラマダンの1カ月の断食を実行する者は、80年代には平均60%だったのが今日の若者(16 – 24歳)の間で74% (+55歳 : 84%)に達している。
 しかし、高学歴のムスリム系エリートでも仏社会で差別の対象に。そうした社会への反動としてイスラム原理主義に傾倒する者も多い。ビンラディン組織網の重要人物として9月末に逮捕された2人のアルジェリア系男性もこの層に属する。D.べガル(35)はパリ郊外のモスクに通いデュッセルドルフ滞在後ロンドンで、亡命イスラム教学者A.ウタダ指導者に師事し、アフガンの聖戦士訓練に参加。2002年初頭に在仏米大使館爆弾テロを企て仏帰国途中ドバイで逮捕、パリに送致された。一方、パリ第7大卒のコンピュータ技師 K.ダウジ(27)は郊外の町役場に勤務後、ベガルと同様にロンドン、アフガンを経、ビンラディンのテロ組織に加わった。
 現在全国に礼拝所は約1500カ所あり、千人以上収容できるのは20カ所、建築的にもモスクと呼べるのは5カ所ある。パリには1926年開設のアルジェリア系モスクド パリの他、もうじき4千人収容できる第2のモスクが18区にできる。全国におもに7宗派:アルジェリア系、エジプト同胞団系、インド系原理主義派、モロッコ系、サウジ系ワッハーブ派、トルコ系、アフリカ系などがあり、中でも原初イスラム教回帰を目指す厳格主義ワッハーブ派とテロリズムとの境は紙一重といわれる。
 この多宗派雑居のムスリム社会に代表機関、イスラム評議会をと99年にシュヴェヌマン元内相が発案。同時多発テロを機にその実現が急務となり10月11日、政府は各派代表とイスラム教識者らを招き同評議会設立のため来年2月予定の評議員選挙の準備を要請した。が、代表者の間で、同評議会がワッハーブ派など原理主義派を公認することは、”体内に毒を宿すこと” と懸念する意見も聞かれる。
 フランスのイスラム共同体(ウンマ)は穏健派から原理主義派まで十数種の分派がしのぎをけずる雑居の共同体だ。聖戦とテロリズムを同次元に置く過激派をいかに国家が統御し、近代的イスラム共同体を構築していけるか。イスラム原理主義の “グローバリゼーション” の中で、それは西洋だけでなくイスラム圏にもあてはまる問題ではなかろうか。(君)

*預言者ムハンマド(マホメット)の後継者として、従兄弟で婿のアリーに忠誠を誓う分派。



一般のムスリムの受け止め方

52% イスラム系政党・組合に反対
35% ムスリム系市長選出に反対
22% モスクの建設に反対 (’89:38%)
* IFOP調査 (9/27 – 28), Le Monde (01/10/5)