定年制改革案討議開始。

 サルコジ大統領の決断は、ヴルト労働相がベタンクール夫人の脱税・政党献金疑惑の泥沼に足を突っ込んでいても揺るがず、同相に定年制改革を強行させ、改革法案が9月7日、下院討議に付された。労組はこの日を選び、教員まで含む大規模なストとデモ(全国で200万人余)をくり広げた。勤続年数の少ない長期・高年失業者や主婦、パート職らの将来の不安と怒りが街頭に爆発した。
 今日、年金赤字額は320億ユーロ、このままいけば2050年には1兆ユーロに飛び上がる。現在フランスでの平均定年年齢は欧州で一番低く59.3歳(英 63歳、独 61.7歳、オランダ 63.2歳 、スペイン62.6歳、スウェーデン63.8歳)。2040年までにスペイン、ドイツ、オランダは定年年齢を67歳に、英国は68歳に引き上げる方針だ。国民の将来を左右する重大改革であるだけにサルコジ大統領もヴルト労働相も政治生命をかけての正念場。以下、改革案の要点を挙げてみよう。
●定年年齢60歳を2018年までに62歳に延長。2011年7月から毎年4カ月ずつ増え、1956年生まれの人の勤続年数は42年、62歳で定年に。
●職種により苦痛度20%以上(産業医が判断)は職業病と認定され、60歳から障害年金を受給できる。
●14~15歳で就職した早期就労者は58歳で、16歳からの就労者は60歳で定年退職できる。
●民間と公務員の格差是正策として、民間と同様に2018年までに事務職公務員の定年年齢を62歳に引き上げ、警察官などは50歳から52歳に、消防士や介護士などは55歳から57歳に延長。
●公務員の年金保険負担率、現行の7.85%を、10年後には民間と同率の10.55%に引き上げる。
●子供を3人もつ公務員は勤務年数15年で定年退職できたが、この規定を徐々に廃止していく。
●年金赤字を埋めるために、高額所得税(年収69,783€以上)の引上げ。ストックオプションは従来の率の3倍、8%課税。年金以外の収入に対して14%、不動産譲渡剰余額に17%(動産は19%)、企業からの配当金には19%課税するなど。
 2011年7月から上記の対策が施行されれば、2018年には423億ユーロの増収入が見込まれるので赤字も解消され、向こう10~20年の年金財政の均衡が計れるだろうとヴルト労働相は皮算用。
 社会党は、サルコジ大統領がどんなに巨額の年金赤字額を掲げようと、1984年に定年年齢を60歳と定めたミッテラン大統領による金字塔を固持する構えだ。労働組合もこの点は同じで、さらに満額受給年齢を現在の65歳から67歳に引き上げることに強く反対する。そして重労働や夜間勤務などによる苦痛度を考慮に入れることと、若年就労の長期勤労者の勤続年数の短縮を要求する。
 毎年約80万人が定年を迎え、1975年に就労人口と定年退職者の割合が3対1だったのが今は1対1.8、2050年には1対1.2まで下がるという。勤続年数の2年延長や種々の課税率の引上げで年金公庫の赤字を埋める付け焼刃的解決で、はたして30~40年先まで対処できるのか。(君)

写真:9月7日午後2時にパリはレピュブリック広場から女性軍を先頭にデモ行進スタート。


 

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