
電子通信・郵便・新聞流通規制機関(ARCEP)は5月21日、データセンターの温室効果ガスの排出量および電力消費が増加し続けているとの調査結果を発表した。環境への影響に対し、国が主導するデータセンター建設推進への批判の声が高まっている。
そのなかでARCEPは、仏国内の約半分にあたる160のデータセンターの温室効果ガスの合計排出量が2022年には4%、23年には13%増、24年は23%増と、年々増加度合いが増していると指摘した。電力消費も2022年は14%増、23年には8%増、2022年に12%増加して2.7テラワット時 (TWh)に達した。
マクロン大統領は昨年2月にパリで開催された人工知能(AI)アクションサミットで、1090億€を投資して国内のデータセンターの建設を推進すると宣言。同時に欧州連合(EU)も大規模データセンターの設置に約2000億€を投資すると発表したこともあり、通信やクラウド関連など28の仏企業が企業連合「AION」を設立し、より大規模なデータセンターの建設を推進している。フランス送電事業者RTEは、最近はボルドー市の電力消費量に相当する100~200メガワットから、原子炉1基分の発電量に相当する1ギガワット(GW)のデータセンターの電力供給に関する問い合わせを受けることも増えているという。
このようにAI時代に対応した「より大きく、より多く」のデータセンター建設の流れに住民の反対の声も上がり始めた。マクロン大統領がぶち上げた「AIキャンパス」は、欧州最大1.4ギガワットのデータセンター11棟(90ha)をパリ郊外セーヌ・エ・マルヌ県のフジュ町(人口655人)に建設する計画で、投資額は500億€。
だが、野鳥保護連盟、農民同盟、環境保護団体らが農地の人工化、環境破壊、騒音、大量の電力消費などを理由に反対。仏本土にはすでにパリ首都圏の160ヵ所を含む350以上のデータセンターがあるが、ここ5年、さらに建設が加速している。
国の地方自治体への補助金が減少するなか、自治体にはデータセンター受け入れによる税収増加の目論見もある。しかし、環境への負荷、土地や水といった自然資源の独占、電力供給不安のため、現在フランス各地でおよそ15件のプロジェクトに対して反対運動が起きている。将来的にデータセンターと住民とが電気や水を奪い合うようになるという懸念もある。そうした懸念に対し、たとえばパリ北郊外ブルジェの市民団体は、英企業が建設予定のデータセンターに関して公聴会も開催されないと不満を露わにし、1.8万人の署名を集めた。
しかし、データセンターを推進したい政府は、4月に成立した経済界簡素化法にデータセンター設置に関する諸規則を緩和することを盛り込んだ。データセンターが重大な国益を体現する計画と認定されれば、都市計画法への適合が簡略化され、送配電工事の加速化などの恩恵を受けられる。
写真や動画などの大量のデータを保存するクラウドのためのデータセンターから、今ではAIに必要な高性能GPU(画像処理半導体)や特殊な冷却技術、大容量ストレージを持つAIデータセンターが求められている。これからのAI時代に対応するためにデータセンター推進に完全に舵を切る前に、限られた自然資源を使用するに値するAI使用か否かを冷静に判断する必要があるのではないだろうか。(し)
