
Pacte agile et immigration
ほぼ10年の歳月をかけて加盟国間で交渉された、新たな欧州連合(EU)の「難民・移民協定」が6月11日に発効し、翌12日から適用となった。人権団体・移民難民支援団体はEUにおける難民申請者の基本的人権の保護を弱体化するものと強く批判している。
2015~16年のシリア難民のEUへの大量流入以来、欧州の保守党や極右政党は難民受け入れの厳格化を求めていたが、各国で極右勢力が伸長したことも追い風となって、今回のEU難民移民協定が2024年5月に欧州議会と欧州理事会で承認された。難民審理の加速化、送還プロセスの加速化を目指すものだ。
新しく発効となった難民・移民協定とは。
協定の主な内容は、
① 難民申請希望者は到着後7日以内にEU共通のデータベース「Eurodac」に登録される、
② 難民申請プロセスは最長12週とし、却下された場合は自国への送還、あるいは第3国の収容施設に移送され、却下に異議申し立てをしても送還停止措置はとられない、
③ 難民はEU域内に到着しても入域したとはみなされず、難民審査中は自由な行動ができない(フランスの場合は空港近くのホテルなどに収容)、
④難 民・移民の到着が多いイタリア、スペイン、ギリシャ、キプロスは、物質面・金銭面で他の加盟国から支援を受ける。これら4国は原則、年間3万人までを他の加盟国に引き受けてもらえる(ただし、ポーランドとハンガリーは1人も受け入れない意向)、
⑤EUが安全とみなす国、つまりそこからの難民は受け付けない国のリストが作成される。現在は原則としてバングラデシュ、コロンビア、エジプト、インド、コソボ、モロッコ、チュニジアの7ヵ国とされるが、加盟国は独自のリストを作成でき、フランスは先の7ヵ国にアルメニア、カーボベルデなど4ヵ国を追加した。
フランスはこれまで、新たな難民・移民協定を国内法に反映させるための立法を行っていなかったため、6月3日以降になって政令や通達を連発して対応しようとしているため、現場では混乱が予想されている。移民難民支援団体は基本的人権の後退と非難しており、仏難民及び無国籍者保護局の職員労組はEUの抑圧的政策に反対するストを呼びかけている。
また欧州議会は、不法移民や難民申請を却下された人たちを収容するセンターを第3国に設置できるようにするEU規則を賛成418票、反対218票で6月17日に可決した。合意には、強制送還措置になった人は10年間または20年間(現行は5年間)EUに入れないことも含まれる。
最終的には各加盟国で正式承認されなければならないが、デンマーク、オーストリア、ドイツなどはすでにルワンダ、ウガンダ、ウズベキスタンなどに収容センターを設置する意向だ。イタリアはアルバニアに収容所を設置したが、法廷闘争のためまだ稼働していない。フランスは人権尊重の面からこの措置に懐疑的で、スペインは明確に反対している。
長年、欧州諸国は難民を保護する国とみなされてきたが、各国の右派・極右政党の台頭により、事情は変わってきているようだ。(し)

