ボルドー特集〈番外編1〉ル・コルビュジエの「ペサックの集合住宅」を見学に。

ペサックには、住居面積63㎡から100㎡までの違うタイプの家が並ぶ。写真は見学できる「摩天楼 maison gratte-ciel」タイプ。

 ボルドー近郊ペサックで、ル・コルビュジエ(1887~1965)の建築が見られるというので、市役所のサイトから予約をした。行ってみると写真で見ていた通りのミントグリーンと茶と白、水色が基調の建物が並んでいる。52棟あるうち、一棟は内部を見学できるようになっている(私たちが行った日は見学はできなかったのだが)。2016年ユネスコの世界文化遺産に登録された、世界に7カ国に点在する17のル・コルビュジエ建築群のうちの一つだ。

ペサックの集合住宅は、設計を依頼した人の名前から「シテ・フリュジェス Cité Frugès」とも呼ばれる。アンリ・フリュジェス(1879-1974)はボルドーに砂糖の精製工場を持ち、芸術に明るく、自ら音楽や絵画などをたしなむ社長だった。ル・コルビュジエの著書『建築をめざして』を読んで心酔し、32歳のル・コルビュジエに工員のための住宅を依頼。200戸を建設する予定が、プロジェクト発足から実現までのインフレで原材料が4倍にもなって、50戸ほどを造るにとどまったという。彼はこのペサックの集合住宅の前にも、同県レージュに「労働者の住宅 Lotissement à Lège」を依頼している。いずれも依頼主フリュジェスとルコルビュジエの、理想都市的なビジョンが反映されている建築なのだという。

「ペサックが革新的なのは、工員でもマイホームが持てるように売りに出されたこと」と案内してくれた市の職員さんは何度も強調していた(1928年には低所得者でもマイホームを持てるよう法律 loi Loucheur が制定された)。そして20年代、自動車を持つのは社会の一部の人だけだったが、ここではどの家にもガレージが設けられている。これも「到来する車社会を見据えていた建築家の先見の明」。井戸から水道、ろうそくではなく電気。中央暖房。洗濯も家ででき、洗濯干し場も設計。窓の幅は2.5メートルと広く、室内が明るい。

住居面積が100㎡と一番大きな「二双の家 maison jemelée」。他にも、7棟を屋根で繋げた「アーケード maison arcade」「ジグザグ maison zig-zag」、「カンコンスmaison quinconce」、第二次世界大戦で連合軍の爆撃を受けた「離れた家 maison isolée」などがある。

ボルドーでは当時から産業が発達していたがため、空気が悪かった。結核が流行り、空気の澄んだ「ボルドーから近い田舎」ペサックには、サナトリアムが作られた。ペサックの集合住宅では、それぞれ住人が屋上のテラスで、隣の家のテラスの人と「ソーシャル・ディスタンス」を保ちながら話ができる。当時は「bain-douche」と呼ばれる公衆浴場へ通う人が多かった中で、家にシャワーを設け、トイレを中庭ではなく家の中に設けるなど、衛生面にも配慮がなされている。

当時、工場で働く人たちは「エショップ・ボルドレーズ échoppes bordelaises」と呼ばれるタイプの家を借りて住むことが多かった。平屋で石造り、玄関と、窓がひとつかふたつある3部屋から6部屋の家。今でもペサックとボルドーを結ぶ道路沿いにも、そういう家が見られる。そんな風景の中に突然出現した、このペサックのコンクリートの家々に人々は驚いたという。

1926年に完成した時から様々な人々の手に渡り、重要文化財として守られるようになったのは1980年代以降のこと(家によって違う)。今では、手を加えるには建設当初に倣わないといけないが、文化財に指定されるまでは、住人たちは窓を小さくしたり、三角屋根をつけたり「近代建築の巨匠が作った家」であることなどは気にせず、自由に、住みやすいように改修した。そんな住人の個性が出ているのも、ここの面白いところだ。 

改装中(?)のこんな状態の「摩天楼」タイプの家も。

 すっかりボルドーの顔のようになった「シテ・デュ・ヴァン」がある新開発区域「バッサン・ア・フロ地区」には40年ほど前まで、大きな砂糖の精製工場があった。17世紀から、交易によってボルドー港にはたくさんのサトウキビを加工した原料糖がもたらされ、製糖はボルドーを代表する一つの産業だった。80年代、370人の工員を解雇して、ボルドー最後の砂糖工場は閉鎖された。
 
【予約】
週日 : Kiosque culture & tourisme
05 57 93 65 40 – kiosque@mairie-pessac.fr
週末 : Maison Frugès – Le Corbusier – 05 56 36 56 46
4月~9月の水~土 : 10h-13h/14h-19h – 日曜 : 14h-19h
10月~3月の水~土 : 10h-13h /14h-18h – 日曜 14h-18h
1月1日、5月1日、12月25日は休み。

余談:「摩天楼」タイプの家が売りにでていたので、不動産価格の目安としてリンクを以下掲載。
www.architecturedecollection.fr/product/maison-gratte-ciel-le-corbusier-pessac/


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ボルドー特集〈1〉進化し続ける町、 ボルドー。 
ボルドー特集〈2〉サーフのできるビーチ、ラカノーへ。
ボルドー特集〈3〉ボルドーから行く絶景スポット、ピラ砂丘。
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Cité Frugès-Le Corbusier / Maison Frugès-Le Corbusier

Adresse : 4 Rue le Corbusier, Pessac , France
アクセス : バス4番線Le Monteil下車、徒歩6分ほど。ボルドーのカンコンス広場あたりからなら、40分強要。
URL : https://www.pessac.fr/a-decouvrir/tourisme-patrimoine/cite-fruges-le-corbusier-539.html

 

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