“Barbara chante Barbara”
バルバラのベストアルバムはなんだろう。彼女の名曲をまとめて聴くことができるベスト・オブやライブ盤も何枚か出ているけれど、ここは迷うことなく『Barbara chante Barbara』。1964年にリリースされ、アカデミー・シャルル・クロのディスク大賞を得た名盤だ。
「待ちたくないの。美しいうちに死んだほうがいいわ Je ne veux pas attendre J’aime mieux m’en aller du temps que je suis belle」と死へのあこがれを明るくアップテンポで歌っていく『A mourir pour mourir』で、このアルバムの幕が開く。
「しめった土から、刈られたわらの匂いが立ちのぼる。車がやってくる。ああピエール、ピエール Une odeur de foin coupé, Monte de la terre mouillée, Une auto descend l’allée,というひたむきな恋歌『Pierre』。バルバラの声と対話していくミシェル・ポルタルのサックスが素晴らしい。
「木があって、ハトが飛ぶ。私の心も飛ぶ Y a un arbre, pigeon vole Dans le petit bois de Saint-Amand」というどこか数え歌のような雰囲気とリズムを持った『Au bois de Saint-Amand』。この連載4回目で紹介した『Nantes』も入っている。
「タクシー、早く、早く!リヨン駅よ Taxi, vite, allons! À la gare de Lyon」とイタリアへ旅する浮き浮き気分を歌った『Gare de Lyon』。パリのさえない天気にうんざりしているときの解毒剤だ。(真)