もう2カ月前からポスターが出回っているフランソワ・オゾンの新作『Potiche』は、この秋イチオシの超級エンターテイメント。原題は「置物的人物」という意味。確かに、カトリーヌ・ドヌーヴ演じる地方のブルジョワの奥様シュザンヌは典型的な「お飾り的マダム」。ところがですね、夫(ファブリス・ルッキーニ)が経営する傘工場でストライキが起きて、社長である夫が労働者に監禁され、その後心労で倒れるという事件をきっかけに、シュザンヌに変化が訪れるのです。夫の代理で社長の座についたものの、実力を発揮してストを沈静させてしまうのです。が、話はここで終わりません。
シュザンヌは奥の手として、地元選出の共産党議員ババン(ジェラール・ドパルデュー)に仲介を頼んだのですが、実はその昔シュザンヌとババンの間にちょっとしたロマンスがあったんです。そこでもしかしたら長男は彼の子ではないかという疑惑が生まれる。権力を失墜しプライドを傷つけられた夫は、長女を味方につけて社長の座を奪回します。一方ババンは、焼けぼっくいに火がついてシュザンヌに求愛。ところがですね、シュザンヌはもっともっと遠く高く飛躍するんです。このオチは観てのお楽しみということで書きませんが、ちょいとしたカタルシスを味わえるラストです。
邦題は『しあわせの雨傘』、これはもちドヌーヴ様の代表作『シェルブールの雨傘』にかけてますが本作もまた彼女の代表作になると思う。『シェルブール…』が若き乙女の悲恋なら、こちらは今のドヌーヴ様の貫禄をもってして説得力をもつ女性解放ストーリー。ラストで彼女が歌う『C’est beau la vie /人生は』 はなかなか感動的。幕開けの赤いジャージー着てジョギングする姿も忘れがたいけど…。(吉)