ひとつの事故が 600本の列車に影響。
ヨーロッパの駅として利用者数最多を誇るのがパリ10区の北駅。タリスやユーロスターといった国際列車から、フランス国鉄TGVやCorail、近郊列車やパリ首都圏高速鉄道RER、おなじみのメトロに至るまで約2600本もの列車が毎日この駅を通過または発着している。 雑然とした駅だが、道を一本挟んだ裏手のモブージュ通りは、忘れられたように人影もまばら。ここにさりげなく居を構えるSNCFの社屋には、24時間、年中無休態勢で列車の運行を監視する地域運行センターCRO (Le Centre Régional des Opérations) がある。CROはフランス全土で23カ所。北駅のものは、パリの北方に広がるイル・ド・フランスからピカルディ地方の一部までが管轄地域。今回は本センターの見学会に参加した。 CROは仕切りがないオープンスペースとなっている。長方形の空間には無数のパソコンが設置され、数十名のスタッフがコンピューター画面とにらめっこ中。彼らは常に駅長や転轍機 (てんてつき) の操作をする人たちと連絡が取れるようになっており、トラブルが発生した際は、運転の中止、運行路の変更、電車の追い越しなどを決定する。無数の電車とリアルタイムで格闘するから、証券取引所のような慌ただしい雰囲気を予想していたのだが、実際は淡々としたもの。案内役によると「朝の9時に事故がひとつあれば、完全に復旧できるのは14時くらい。およそ600本の電車に影響がある」という。 さて事故の最悪なパターンのひとつが飛び込み自殺。フランスにも多いのだろうか? こちらには「イル・ド・フランス圏内だけで毎日続くことが多い。最近も1日2件あったばかり」という答えが返ってきた。ちなみに自殺が特に増えるのはクリスマスシーズン。孤独の人がさらに孤独を感じる時期なのか。いずれにしてもフランスだって日本と大差ない飛び込み自殺大国なのだ。損害はSNCFが見積もり、保険などを使って遺族に支払わせることがあるという。自殺はSNCFにとっても被害は甚大。悲しいが、あまりに頻繁なこと過ぎて、同情する暇もないのかもしれない。(瑞)
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24時間、年中無休で列車の運行を監視するCRO
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