小学生になり早9カ月。ミラのフランス語が急激に「マセたパリジェンヌ+チンピラ風」に傾いてきた。きっと友だちと影響を与え合っているのだろう。早口でまくしたてる様子は、なんとなく自信ありげで偉そうだ。一方、日本語を話すミラは、ちょっと頼りなさげで幼くも見える。思えば自分の場合だって、日本語とフランス語を話す自分は少々違う人間っぽい。フランス語を話す時は必要以上に真面目モード。面白みに欠け自分でも居心地が悪い。私の場合は単に言語能力の違いが原因だろう。ミラは生まれた時から日本語使いだから状況は異なる。とはいえ日本語を使うミラの方がどこか頼りなさげに見えるのは、やはり彼女の日本語がフランス語に押され気味だからには違いない。これはピンチだ。
今は残念ながら予定が合わないため日本語補習校に通わせてあげられないから、日本語教育はせいぜい私が自己流で教えてあげるのみ。先生は私一人だから、やや強引でもなるべく多様な日本語に触れさせようと意識はしてはいる。例えば先日のこと。ミラに新しい言葉を教えようと、やや不自然ではあったが「ミラちゃんはママの誇り!」と言ってみた。そしたらミラの顔は段々と曇り、ついにはテーブルの下に潜って出てこなくなった。そして腕を組み「私はゴミじゃなーい!」と怒りの一声。どうも「誇り」と「埃(ほこり)」を間違えているらしいのだった。(瑞)