幼稚園に「デロガシオンの申し出は○日まで」という張り紙があった。デロガシオンとは「例外措置」のこと。この場合は通うべき公立学校の変更願いだ。通学区は住所で振り分けられるとはいえ、フランスではかなり頻繁に、個人が役所と学校に直訴をする。ミラの親友プリュンヌのママも「来年度の小学校入学は隣の区の学校の方が近いし環境もよいから申し込む」と言っていた。他には学年が上がってくると、申し出がかなわなければ、わざわざ希望区域にアパートを借りることでダミーの住所を入手し、望んだ学校に入学させるという荒技を使う人もいた。
そんな親がいる一方、子供を指定された学校に行かせることが当然と思う親もいる。そんな人は本当に偉いと思う。なぜなら私は正直、自分の子は少しでもよい環境で勉強してほしいと願ってしまうからだ。「平等」をうたうフランスに住むことを決めながら、そんな風に思ってしまう自分が少々後ろめたい。しかし実際ミラが来年度入学に指定されている公立小学校の評判はあまりよろしくない。高学年にもなると、授業中が動物園状態になる可能性も否定できない。そんなこんなで気分は落ち着かない。だがミラ本人はというと、庶民的な幼稚園の雰囲気にしっかり溶け込んでいる。トランプの恋占いを教えてあげたら、イタズラ大好きなアフリカンボーイとの相性を真剣に占っていたものだ。(瑞)