四人姉妹、といえばすぐに谷崎潤一郎の『細雪』の鶴子、幸子、雪子、妙子を思い出す。こちらはチェーホフが描いた『三人姉妹』ともかなり違う、フランス版の四人姉妹。時は現代、長女、次女、三女までは独身の40代、50代、それぞれ秘書、女優、教師として人生を築いてきた。みな独身で、彼女たちの会話に登場する男性は「お父さんはねぇ…」という思い出の中の父親のみ。唯一、四女の娘の父親が噂されるけれど、相当なプレイボーイですれ違った女性は放っておけない、というどうしようもない人物らしい。10年前、クリスマスに父親が他界してからというもの、四姉妹は夏至の日にクリスマスを祝ってきた。さて、例年どおり夏至に集まった四姉妹が迎える今年のクリスマスは…。
イザベル・ド・トレドの脚本を、長女役を演ずるアニック・ブランシュトーとジャン・ムリエールが演出する。家族、しかも男性の存在が皆無の女ばかりの世界で起こる日常を描くことは、一歩間違えるとミニマルすぎる故、狭い世界観の中にとどまってしまう、という危険性をはらんでいる。そのぎりぎりの線をこの戯曲は歩んでいるが、幸いなことに四姉妹を演ずる女優(ブランシュトー、マルチーヌ・モンジェルモン、 フランソワーズ・レピン ヌ、アンヌ・リシャール)それぞれの力量と、息の合った演技でテンポよく進んでいくストーリーは、わたしたちの注意を引きつけ飽きさせない。
マチュラン通りにあるミシェル劇場はリニューアルしたばかり。そこで、今回のように豪華なキャストでのブールヴァール劇で再出発を祝う、ということだろう。(海)
Théâtre Michel : 38 rue des Mathurins 8e
08.9268.3622 M。Havre-Caumartin
火~土21h、土マチネ16h30、
日マチネ15h。