外からは中が見えないガラス戸を開け、建物内に入り入場許可用のバッジをもらう。建物全体は、Grand Orient de France(フランス大東社)本部のもので、中にはいくつもの祭壇のある部屋があるのだが、会員以外はもちろん入れない。建物の奥まで歩きようやくミュゼの入り口へ。受付には暇そうなおじいさまが一人。25mプールがひとつ入るくらいの細長くて薄暗い空間が広がる。展示品で目立つのは、刺繍が施されたエプロンの数々。フリーメイソンの起源は、中世の石工職人の組合であったとする説が有力だが、かつて職人が石を切る時に使ったエプロンが、後世になるにつれ世俗における偏見から身を守るシンボルとなったものなのだ。メンバーは、このエプロンを秘儀に使用するという説もある。他の展示物としては、公印、メダル、陶器、柱時計、誰だかわからないが有力者であろう人々の肖像画や彫像。見学していると、私以外の唯一の見学者である男性が近寄ってきて、「あの素晴らしい剣を見たか?」と興奮して話しかけてきた。会場の隅には段ボールも積まれており、倉庫にでもいるようで、なんとなくすごい宝に包まれている気がせず、「見たかもしれない」とテンションの低い反応をすると、感動を分かち合えない失望とともに、男性はすぐに立ち去った。あとでその剣は、フランス人権宣言の起草に力を尽くしたラファイエットの剣であったことがわかる。お宝には違いない。
その後、その同じ男性が、受付のおじいさんに話しかける声が聞こえてきた。会話からこのおじいさんもフリーメイソン会員であるのがうかがえた。男性は会員になりたいのか、名刺を渡し自己紹介に余念がない。でもそれを淡々と受け入れ、聞き入れる地味なおじいさん。彼こそが、急にはかりしれない大物に見えてきたのだった。(瑞)
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Musée de la Franc-Maçonnerie |
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