何者かに追われ、夜の闇を切り裂き走り抜けるハリー(リチャード・ウィドマーク)。モノクロの街を冷淡に切り取る、フリッツ・ラングにも引けをとらない確信に満ちた冒頭のカメラワークだけで、一気に映画に引き込まれる。自分を案じてくれる心優しい恋人もいるのに、一攫千金を夢見て、レスリングの八百長試合をしかける男の負け犬的逃避行の物語だ。 今月は6区の映画館Action Christineで、再評価が待たれるジュールス・ダッシン監督作品が順次公開。表題作を始め、ダッシンの傑作フィルム・ノワール三部作『La cite sans voiles』、『Les demons de la liberte Brute Force』がニュープリント版で上映される。(瑞)
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●Wallace et Gromit : le mystere du lapin-garou アカデミー賞3連続受賞ニック・パーク監督のシリーズ初の長編作。 発明好きでかなりの楽天家ウォレスと心優しく才気煥発な犬のグロミットの名コンビが、畑を荒らすウサギからみんなの野菜を守るため立ち上がる!しかしこのウサギ、ただのウサギではなかった! サスペンスあり、スリルあり、アクションも、笑いも涙もあって、(さらにはペーソスまである!)テンポよく一気に見終えることができる。コロリとしたクレイの質感も気持ちよい。キャラクターも可愛いだけでなく、どこか不細工で、そこが不思議と魅力的だ。メルヘンなだけではつまらない、という大人にぜひ見て欲しい。(菜) |
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Marion Cotillard 聡明そうな瞳とキレイな口元が印象的なマリオン・コティヤール。今月公開のリシャール・ベリ監督作品『La Boite noire』では、スリラーの世界で新境地を開拓している。 1975年9月30日パリ生まれ。俳優の両親の影響で、赤ちゃんのころから役者として舞台から舞台へひっぱりだこ。6歳で初めてTVドラマに出演。だが映画で重要な役を得るのはリュック・ベッソンのプロデュース作品『TAXI』シリーズ(1998~)から。スピード狂のタクシー運転手の恋人として、溌剌とした印象を残す。続く重要作品に『世界でいちばん不運で幸せな私』、『ビッグ・フィッシュ』、『ロング・エンゲージメント』など。Y・サミュエル、T・バートン、J=P・ジュネと、幻想的な絵作りに定評のある監督との仕事が続く。 夫の復讐に燃える薄幸の娼婦ティナを演じた『ロング・エンゲージメント』では、セザール助演女優賞も獲得。授賞式では、「俳優の仕事が大好き」と声を震わせ語っていた。 9月に公開された『Ma vie en l’air』では、「初めて年齢や環境などが素顔の自分に近い」と認める女性アリスを、自然体で演じた。目下出演交渉が殺到中で、シナリオの検討はもっぱらお母さんの担当。来年はマリオン版エディット・ピアフがスクリーンで見られるはずだ。(瑞) |
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