5月5日の大統領決選でルペン候補を阻止し共和政を守るために、左派も一丸となって、昨日まで敵だったシラク大統領を極右勢力への防波堤にするため、82%という未聞の支持率で再選させた。 翌日、大統領の重臣からなる即席のラファラン内閣が組閣された。共和国連合(RPR)の中でも右寄りのサルコジ・ヌイイ市長に、内務相と新設の国内治安相という2つの肩書きを背負わせ、選挙戦でシラク大統領がガナリたてた治安対策を前面に出している。6月9日、16日の国民議会議員(577人)選挙をひかえ、仮花道での大見得切っての演技に見えなくもない。 が、同選挙で左派が過半数を得れば、またもやシラク大統領との保革共存政権が生まれる可能性がある。そこでRPRは、右派同士の相討ちをさけるため「大統領多数派連合UMP」の旗のもとに、RPRと UDF(仏民主連合)、DL(自民党)との統一候補作戦に出ている。 一方、ルペンが率いる国民戦線党(FN)は、国民議会議員(現2人)の増員をめざすだけでなく、決選(第1回投票で12.5%以上得た候補者が残れる)で、左・右・極右三つどもえの決選に挑むかまえだ。大統領選の結果に基づくルモンド紙の推定によれば、FN党は237の選挙区で右派または左派候補とせりあう形勢だ。 そんな中で最近、ルペルチエRPR新総裁は「三つどもえの決選からRPRが引きさがる理由はない。数人のFN候補の当選よりも左派の当選の方が危険が多い」、FNとの闘いよりも左派との闘いの方が大事と、大統領決選でルペンに反対した82%の投票者を裏切る発言をしている。 父(ジョスパン)なし子の社会党には、右隣同士の相討ちをぬっての当選もありうるわけだが、候補者乱立でそれも確かではない。そこで、共産党や緑の党、急進左翼党と組んで170の選挙区で統一候補(2党または4党)を立てることに決定。 が、マイナーな党までが勝ち目のない選挙区にも出馬している。理由は簡単だ。党費援助法(1988)により、党が50以上の選挙区に候補を立てれば、各候補の得票数×1.70ロが支給される。さらに、党には当選議員1人あたり年44,200ロの援助金が5年間支給される。で、今選挙は8633人というインフレ選挙に。 左右陣営とも候補が乱立すればするほどFN党は肥えるばかり。大統領選挙公約にルペン党首は、治安、人種差別、移民排斥、反欧州連合(脱退しユーロからフランに復帰)、死刑復活などを掲げ、約550万人(20%)の支持を得ているのである。 それは、オランダで移民に反対するポピュリスト(民衆主義派)で、5月6日に暗殺された故フォルタイン党首の党が、15日の総選挙で一挙に26人(17%)を国会に送りこんだのとあまりにも似ていないか。 オーストリア、イタリア、オランダと、移民にもグローバリゼーションにも反対するポピュリスト勢力の波が高まっている。ルペン派もその波のひとつとしてとらえるべきなのだろう。(君) |
国民議会議員選挙に候補者最多数 |