◎Odéon, St-Germain界隈 6区
映画監督の近藤麗子さんはパリに住んで14年。日本では映画学校に通いながら東京の映画製作・配給・上映会社ユーロスペースで働いていた麗子さんが、映画の国に来て最初に住んだのは、リュクサンブール庭園のすぐ近く、ムッシュー・ル・プランス街。映画『ディーバ』の中で特に気に入っていた夜明けのデートシーンに撮影されたこの庭園近くに住んだことに強い縁を感じたという。麗子さんは映画館の多いこのカルチエを離れられず現在も同じ6区のサンジェルマン通りに住んでいる。
来仏当初、映画学校EICARの監督コース在籍中だった麗子さんが製作した16ミリフィルム短編映画がコンペでグランプリを受賞した。なじみ深いリュクサンブール庭園とその周辺をベースに全て左岸で撮影したものだった。コンペ優勝により35mmフィルム撮影資金を得た麗子さんは、その後次々と制作し、現在7作目の短編映画の編集中。
サルトルやボリス・ヴィアンに愛されたサンジェルマン・デプレ。そのカフェ文化の真髄が徒歩圏内のカルチエにあることも大切な要因であり、左岸に住む幸福を感じている麗子さん。アパルトマン建物の中庭には想像もしない美しい空間が隠れているのも界隈の特徴だ。麗子さんの住むアパルトマン中庭にも小鳥がさえずるオープンテラスがあり、住人専用の憩いの場となっているそうだ。通りすがりの人には知ることのできない特権空間である。また、麗子さんにとってフェティッシュ映画的存在である『ママと娼婦』。今も変わらぬそのロケ地を散歩するのが楽しい。ただ、グローバリゼーションの波で70年代のパリジャンらしき雰囲気を持った人がいなくなってしまったことだけが少し寂しいところかも知れない。
麗子さんは現在、長篇映画のシナリオを執筆中である。カルチエの人間ドラマがテーマとなるようだ。執筆には自分のアパルトマンよりカフェを好む。サンジェルマン・デプレのカフェは彼女の書斎なのだ。(久)
●Eggs & Co
麗子さんお気に入りのブランチの店は名の通り卵料理専門の店。サンジェルマンの裏通りにお洒落な農家風内装。オムレツ、スクランブル、ココットなどのバリエーションでも麗子さんが特に好きなのは、ウフ・ベネディクト。写真はノルヴェジアン14€とフロランタン13€。美味! 無休10h-18h。
11 rue Bernard Palissy 6e 01.4544.0252
●La Nouvelle Seine
7月にオープンしたばかりで1階はバーレストラン、地下はシアター。セーヌ河岸に浮くペニッシュ。スペクタクルや映画上映もあり、麗子さんの映画も上映されている。土日のブランチ24€は船からノートルダム大聖堂を眺めながら食べられるのがお気に入り。または夕暮れにセーヌ川を背にしたアペロに癒される。
無休 9h-2h。 www.lanouvelleseine.com
3 quai Montebello対岸 5e 01.4354.0808
●J’go
南西部ガスコーニュ料理のバー・レストラン。なんといってもフォアグラ、そしてビゴールの黒豚生ハムが美味しいこの店。テラスのワイン樽テーブルでスローフードをつまみに南西産ワインで過ごす一時が幸せ。店内にはジャンボンがブラブラ ぶら下がり、活気あるムード満点。
無休12h-15h / 18h-0h30。 01.4326.1902
Marché St-Germain, rue Clément側 6e
『From Her to Eternity』の撮影風景。
同映画ポスター。
ファインダーを覗く近藤麗子監督。
『MÄRCHEN II』のシーンより。
映画『From Her to Eternity』の撮影風景。