キャビア、トリュフと並び、世界三大珍味と称されるフォアグラ。クリスマスだけに限らずフランス人の食卓を豪華に飾る伝統的な食材だ。発祥は古代エジプトまで遡ることができるが、フォアグラの味が極められたのはフランスで、今や世界の生産量の73%を担う。とろけるような濃厚な味わいで、とりこになる人が多いが、その一方で、強制給餌により肝臓を肥大させる製法が「残酷」として、批判を浴びるようになった。昨年7月からはカリフォルニア州が、フォアグラの生産・販売を禁止にしたのは記憶に新しいところだ。
今回は、創業1830年というストラスブールきっての老舗の肉屋〈Frick-Lutz〉で、フォアグラの加工現場を見学させてもらうことに。世界遺産に登録される大聖堂から徒歩1分という抜群の立地で、買い物客が絶えない人気店でもある。フォアグラといえば主にカモとガチョウの肝臓で作るが、国内最大の生産地とされる南西部のランド地方は、野性的な味わいがあるカモのフォアグラの生産で有名なのに対して、ここアルザス地方は、繊細な味わいが楽しめるガチョウのフォアグラで名高いという。
まず大きな耳を思わせるフォアグラのかたまりを二つに分けて、指やナイフで筋や血管を丁寧に取り除いていく。血管は火が通ると赤くなってしまうので、特に入念に取る。そして塩、コショウに加え、秘密のスパイスをふりかける。このスパイスは店によってレシピが異なる。だがあくまで素材の味を引き立てるための存在であり、量は控えめに使っているとか。それからガチョウの場合はポルト酒、カモの場合はアルザスのワインをふりかけ、ラップをしてマリネ。最後に湯せんをしてオーブンで温め完成となるが、スタッフいわく、「作業そのものは難しくないが、湯や室内の温度調節に細心の注意を払う」とのこと。
さて本店のオーナー夫人に、昨今のフォアグラ批判について意見を聞いてみた。「アメリカからの批判は、動物愛護という観点より、嫉妬や政治的な意図を感じます。フォアグラは高貴(noble)な食材であり、フランスの大切な文化。なくなることは全く考えられませんね」(瑞)
二つに切り分けてから筋や血管を除いていく。
ガチョウのフォアグラに、 マリネする前にふりかける ポルト酒。
湯せんにかける時の 湯の温度調整は厳密だ。
Frick-Lutz : フォアグラの加工販売
Adresse : 16 rue des Orfèvres, 67000 StrasbourgTEL : 03.8832.6060