曲を捧げた人は数知れず。フランソワ・ベルナムさんは、ルノーやパトリシア・カース、21世紀に入ってからもメリッサ・マルスやカンタン・モジマンら若い才能を発掘。70年代に一世を風靡(ふうび)した少年コーラス「Poppys」の曲をはじめ、国民的ヒットも多く手がけた。自身も60年代後半にミシェル・ベルジェの庇護のもと、世にも羨ましい「逆さ(旧)ドリカム状態」(つまり男1人+女2人)の音楽ユニット「Roche Martin」で歌手デビュー。ソロとなり黄色い声を浴びた後、現在も音楽家&プロデューサーとして第一線を歩む。
フランソワさんが住むのは15区のセギュール大通り。25年前に偶然選んだ場所だが、気に入って今も住人のまま。家を出て右に歩けばカンブロンヌ方面。ギュスターヴ・エッフェルが設計した高架下にはカフェやレストランが肩を寄せ、生活感を感じさせる。一方左を行けば、ナポレオンが眠るアンヴァリッドへと続く道。政治家御用達の落ち着いた界隈だ。そんなセギュール界隈で、これまでどんなご近所付き合いをしてきたのだろう。
「パリジャンは疑い深くてちょっと愚か(笑)。でも隣人との関係は自分で積極的に切り開かないと。私は意識して努力しました」。フランソワさんの3人の子どもが小さい頃は、彼らに「なにかあった時に行ける場所」が必要だった。「だから近所のアラブ系商店、肉屋、パン屋、薬屋とは日頃から親しくしてきました。みんな子どもたちを可愛がってくれて感謝しています」
さて近所で好きな場所を訊ねると、意外にも「旧陸軍士官学校」という答えが返ってきた。フランソワさんの朝は音楽家らしく、つまびくギターの音色で始まる。それから気分転換の散歩に出る場所なのだ。朝7時頃なら50頭の馬が見られることも。フランソワさんは乗馬が趣味。大好きな馬を眺めていれば心が和むのだ。でも旧陸軍士官学校の裏門横にある深いお堀だけは要注意。「以前散歩中に私の犬が落っこちたんだ。ハシゴを持ってきて助けたよ」。(瑞)
●La Cantina
最高の創作イタリア料理に出会えるお行儀の良いトラットリア。オーナー・シェフであるミモさんの腕もたしか。フランソワさんはここで映画関係者によく遭遇する。選挙中のオランド大統領もよく食べに来た。予算は30〜60€。日月休。12h-14h30/19h-23h。
81 av. de Ségur 15e 01.4734.5559
●Le Moulin de la Vierge
美しい外観が食欲をそそるパン屋さん。フランソワさんの3人の子どもはみなここのパンが好き。パティスリーも充実でミルフィーユは店の看板商品。「近所の日本人パティスリーの店(サダハル・アオキ)も好き」というから、セギュールはおいしいお菓子にこと欠かないのだろう。
7h30-20h。木休。パリには他に3店舗。
166 av. de Suffren 15e 01.4783.4555
●École Militaire
エコール・ミリテールこと旧陸軍士官学校は、ナポレオンが大砲戦術を学んだ歴史ある場所。フランソワさんがふらっと馬に会いに立ち寄る。セギュール方面から歩けば学校の裏側に突き当たる。背後には、まっすぐに空を突き刺すエッフェル塔。馬が見られる学校の裏門は、Avenue de Lowendalにある。
Les Roche Martinというバンドで 歌手デビュー。
音楽家でプロデューサーの フランソワ・ベルナムさん。
カンブロンヌ駅付近。