ある夜、モンジュ通りを歩いていると、既に零時近いにも関わらず営業している花屋が目に入る。極自然志向な花の選択、オリジナルなデコレーション、その店先に設置されたテーブルにつく年配の女店主は通行人を眺めている。ふと見ると、なかなか手にすることができないスミレの花束が売られているのに惹かれ思わず購入する。その女店主と話をすると彼女の名前はヴィオレット(スミレ)だという。強い個性を感じさせる彼女は既にオヴニーの「Paris la nuit」欄に登場しているが、再登場してもらって、彼女の好きな街について語ってもらった。
ヴィオレットさんがモンジュ通りに花屋を開いたのは 1959年の革命記念日。もうすぐ53年、半世紀以上にもなる。すぐ近くのムフタール通りにはたくさんのバーがひしめき合っていて、第二次世界大戦中にはレジスタンスたちの集会所だったバーも残っていたらしい。その後はゲンズブールやフィリップ・レオタールとよくグラスを傾けたそうだ。しかし彼女のようにカルチエの過去を実際に知る人は、非常な地価高騰も理由に、この界隈にはもうほとんどいなくなってしまったようだ。
作家、詩人、映画人、今も多くの文化人がヴィオレットさんの店に顔を出す。また周辺のレストランやバーの人たちは料理をもってヴィオレットさんのところにやって来る。彼女の店は単なる花屋ではなく人々が交流する場所である。ヴィオレットさんのつくったブーケがきっかけで結婚をしたカップルは何組もいるそうだ。「花が何処に行くのか、誰の手元に行くのか知りたいの。私は花とともに育ってきたから花がなければ死んでしまうわ」という彼女。もうけるために花屋をしているのではないともいう彼女。花を売りながらこの地で人と触れ合うのが彼女の人生そのものなのだ。
チェーン店の花屋では得られない愛情の込められた花束をつくってくれるヴィオレットさん。話をしている間に何人もの若い男の子が花を買いにくる。彼らの買う花たちの行方を知ってみたくなった。(久)
ヴィオレットさんは12h頃-0h頃迄店を開けている。
月休。
月休。
Au Pot de Fer Fleuri : 78 rue Monge 5e 01.4535.1742
●Gelati d’Alberto
ここのアイスクリームは、コーンにバラのような花形に盛りつけてくれるのがヴィオレットさんのお気に入り。
ひなげし、モヒート、キンダー、半イチジク&半ブドウなんていう変わったフレーバーが楽しめ、もちろんスミレ味もあります。
ひなげし、モヒート、キンダー、半イチジク&半ブドウなんていう変わったフレーバーが楽しめ、もちろんスミレ味もあります。
12h-0h。無休。
45 rue Mouffetard 5e 01.7711.4455
●Vina Villa
ヴィオレットさんの店の斜め向かい。営業時間は大体何時というスタンスがこれまたヴィオレットさんと一緒である。小さいスペースだが上質ワインを扱うカーヴ。ボルドーを含め自身の出身である南東のワインを中心に買うそうだ。
夕方-23h頃。月休。
85 rue Monge 5e 01.4337.9677
●Oroyona
ヴィオレットさんが友人とお昼を食べる時などに愛用するクレープ屋。小さなメザニンの店はイートイン、テイクアウト共いつも人が溢れる人気店。ガレット+小麦粉の甘いクレープ+飲み物のランチセット(20h迄)は5.5€と破格で大人気。
12h〜01h45。無休。
36 rue Mouffetard 5e 01.4336.6046