
オンヴァーガーニェ!オンヴァーガーニェ(勝つぞ、勝つぞ)!と叫ぶ人々。スポーツの試合のようだが、選挙の集会だ。3月に行われた市町村議会選挙。パリでは広場、サーカス劇場、セーヌ河岸などと場所を変えて候補者のスピーチが続けられ、集まった人々は候補者に声援を送った。
決戦投票では棄権が42%に上り、あらゆる政党の得票率を上回ったが、選挙のたびに、この国の人々の政治熱には感心する。また日頃から、市民運動やデモに参加して社会や生活を変えようとする、間接的ながらコンスタントな活動に、政治文化の厚さのようなものを感じる。
パリでは今回、イダルゴ前パリ市長のもと長年助役を務めたエマニュエル・グレゴワール氏が市議会選に勝利。氏は開票結果を聞いた広場から、自転車で運河沿いを走って市庁舎へと赴き、その鍵を受け取った。これまでパリ市が進めてきた自転車レーンや自転車シェアリングの整備を讃え、「エコロジーの町パリ」をアピールする、巧みな演出だった。
選挙が終わってほっとする間もなく、政治家もメディアも来年の大統領選挙の話題にスイッチした。候補者選びの方法、それをめぐる意見の相違、内部分裂(!)…。この秋には上院選挙も控えている。今後もしばらく、人々が国の行方に目をこらす、緊張感ただよう時が流れそうだ。(六)
市町村議会議員選挙 2026

結果は?
3月15日、22日、全国一斉の市町村議会議員選挙が行われた。地方選挙とはいえ、少数与党の不安定な政局への国民の評価を表すものとして、そして来年の大統領選・総選挙を占う前哨戦として注目された。とはいえ、投票率は57.5%で、コロナ禍の前回2020年の42%よりはいいものの、2014年の62%には及ばなかった。
地方地盤の乏しい与党の中道諸党に比べ、基盤を持つ右派(共和党LRなど)や左派社会党が強みを発揮して、人口3500人以上の3343市では、全国的には左派諸党が829市を掌握、右派諸党が1267、与党の中道諸党は586、極右が63、急進左派 (服従しないフランス党LFIや共産党など)が7を獲得した。
選挙前の世論調査でも支持率が高く、注目された極右。前回2020年の選挙では13の市長村の政権を握ったが、今回は5倍近い63に。議席数は827から3427議席を獲得した。フランス第五の都市ニースの市長の座を握ったのも象徴的だ。
また、フランス第二の都市マルセイユでも極右は票を伸ばした。次期大統領選の試金石と言われる同市の決選投票は左派、極右RN、右派中道の三つ巴に。結果は左派の現職ブノワ・パヤン氏が54.3%で勝利したが、2位のRNフランク・アリシオ氏は40%(前回は20%)の得票率で34議席を獲得。大統領選での行方を予感させる。
今回、争点になったこと。

不安定な国際情勢、エネルギーなど物価高騰の社会背景のなかで、国レベルでは購買力や医療制度などが主な争点となったが、市町村長に期待することでは、地元の各種サービスの維持や、安全と平穏の向上など、日常生活に関することが上位にくる(下リスト)。また人口5000人~1万人の市でも84%が市警察を有するのだが、中・大都市では、右派・中道・極右は市警察の権限を強化することによる治安維持をさかんに訴えた。住宅不足/住宅高騰問題も大きな争点で、パリやマルセイユは長期賃貸物件数を脅かす観光客相手の短期賃貸を抑制する策を以前から打ち出している。全国的には環境問題への関心が低下しているといわれるが、各自治体では水資源などの環境問題は総じて関心が高いようだ。(し)
【基本情報】市町村議会議員選挙 (Élection municipale)とは?
フランス全土、計3万4875のコミューン(commune)と呼ばれる地方自治体の最小単位の議会議員を選ぶ選挙。首長は議員の互選だ。コミューンは住民100人未満の村からパリのような200万都市までと幅広く、人口により議員数が定められる。
選挙方式は比例代表制で、男女の候補者を交互に同数並べリストをつくる。第1回投票であるリストが絶対過半数を得たら決選投票はない。勝ったリストは自動的に議席50%を獲得し、残りの議席をトップリストも含めて得票率に応じて割り当てる。
決選投票には第1回で10%以上の得票率を得たリストが進む。決戦投票の結果の議席割当方法は同じ。パリ、マルセイユ、リヨンは2025年8月11日法で選挙制度が改正され、区議会議員と市議会議員を選ぶ別々の投票がある(*リヨンは周辺58コミューンで構成されるリヨン・メトロポール議会議員も選出されるので3つの投票がある)。制度はほぼ同じだが、市議会選挙のトップリストはまず25%の議席を得られる(区議会選挙は50%)。
任期は通常は6年。ただし、6年後の2032年に大統領選(+おそらく総選挙)があるため、例外的に任期は7年になり、次回は2033年になる。
市町村長の権限は?
議会の決定事項を実行すること。公共事業を行い、予算を提案し、都市計画・整備の舵取り、治安、安全、公衆衛生、ごみ収集。幼稚園・小学校の管理(建物、給食、課外活動)、図書館、保育園、高齢者施設、市道、緑地などの管理と幅広い。住民の生活に直結した事柄を扱うだけに、市町村長に親近感を持つ住民が多いという。
女性の割合
今回の選挙から住民1000人未満のコミューン(全体の約7割)も男女同数リストが義務化されたので、理論上は当選した男女議員の比率もほぼ半々になる。ゆえに前回2020年の選挙では1000人未満の町で女性の議員の割合は37.6%だったのが、今回は51.8%になった。しかし、そうした町で女性候補がそろわない場合は女性が男性より2人まで少なくてもいいとの例外措置がある。男女同数がまだ実現されていない海外県ではマヨットが6%、グアドループが9%と非常に低い。トップリストの筆頭が女性なのはルモンド紙の試算によると23%で、3月27日時点では首長の互選が終わっていないが、女性首長の割合はほぼそれに近い数字になるだろう。左派では女性首長の割合が22.3%とやや高く、右派の18.9%、中道の18.3%、極右の15.9%を凌ぐ。

ほかに、こんな争点も。
給食の食材を有機栽培に。無償化も。
幼稚園(3歳~)と小学校、高齢者施設は市町村の管轄(中学は県、高校は地域圏管轄)なので、それらの給食・食事は市町村選でしばしば争点に。仏紙によると、例えば人口3万のエピナル(ヴォージュ県)では市営菜園があり学校や施設に100%有機農法の野菜・果物を提供する。
有機小麦を育ててパンやパスタを提供するところもある。2018年制定のEGalim法(農業・食料法)では給食などの集団食堂では有機製品を20%使うことが義務付けられた。しかも、地元農家の産物を市町村が買い上げることによって農業の支援や若者の就農を促進できる。有機導入の程度は5%程度から100%までいろいろだが、住民には好評だ。また、パリ郊外のサンドニ市は幼稚園・小学校の給食が無料だが、今回の選挙でそれを公約にした候補もあった。
地球温暖化、環境問題が争点の市町村も。
近年、フランスでは土地の人工化(土をコンクリートやアスファルトで覆うこと)が問題になっている。過去10年間で毎年2.4万haの土地が人工化されたが、これは温暖化を促進し、生物多様性を損ない、水のサイクルを乱すので洪水発生にもつながる。2021年の気候レジリエンス法では土地の人工化をゼロにする目標が定められた。
また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、フランスでは2100年までに海岸が浸食されて45万軒の住宅が水没すると予測。温暖化で海面が100年で20㎝上昇した今日。どう対処していくかは海沿いの町では深刻な課題だ。また、農地の上部空間に設置した太陽光パネルで発電を行いつつ、下部で放牧や果樹・野菜栽培をする「アグリボルタイクス」(営農型太陽光発電)の建設計画が全国でもてはやされる一方で、それが大規模に展開されると景観が損なわれ観光客や移住希望者を遠ざけると反対運動が起きている町も。
街で、選挙について聞きました。


社会的な政策を掲げたグレゴワール氏に投票しました。政治への関心はしょど強くありませんが、ダチ候補は阻止したかった。

パリの市長には治安を強化してほしいね。

子どもたちに投票することの大切さ、投票の権利の尊さを教えたくて、模範を示すべく投票に行きます。子どもたちもついてきます。

私の住む町では医師
不足が深刻なので、新市長には、医療環境の改善を最優先に取り組んでほしい。

パリが、社会、教育、他人へのリスペクトがある左派の町であり続けるよう、グレゴワール氏に投票しました。新市長は実直な感じがします。



