
国内5番目の都市型公共交通機関ロープウェイ
パリ南東の郊外クレテイユ市と隣接する町を結ぶロープウェイ「Câble C1」が12月13日に運行を開始した。公共交通機関としての都市型ロープウェイはフランスでは珍しく、国内で5番目。パリ首都圏では初めてだ。欧州での都市型ロープウェイでは最長となる。

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C1に乗ってみた!ビデオはこちらから。
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Câble C1はクレテイユ市のポワント・デュ・ラック駅(メトロ8号線の終点 Créteil – Pointe du Lac 駅)とヴィルヌーヴ・サン・ジョルジュ(Villeneuve-Saint-Geroges)市のヴィラ・ノヴァ駅の間の5つの駅をつなぐ4.5kmのロープウェイ。設備と設置はオーストリアのドッペルマイヤー社が1億3800万€で受注した。
この区間はバスなら最低35分かかるがロープウェイなら18分で行ける。Câble C1は10人乗りゴンドラ105台を使ってメトロと同様に朝5:30から23h30まで運行し、1日あたり1万1000人の利用客を見込む。パリ首都圏の交通ICカード「Navigo」や「bus-tram」チケットで利用できる。運営は公共交通部門の大手トランスデヴ社。同社はクレテイユ周辺の路線バスも運営しているため、強風や故障・点検の際などロープウェイが運行できないときは代替バスを運行する。

このロープウェイ設置案は、パリに近いのにメトロも首都圏高速鉄道RERもない地元リメイユ=ブレヴァンヌ市の市長がメトロやトラムウェイといった高コストのインフラを設置せずにパリに行きやすい方法として20年前に思いついたが、当時はトラム敷設やメトロ延長が検討されており見向きもされず、やっと10年後に計画が具体化した。
南米のコロンビア、ブラジル、ボリビアなどではロープウェイを採用している町も多い。観光目的やスキーリフトでなく、都市の公共交通機関としてのロープウェイは、フランス国内ではブレスト、レユニオン島のサン・ドニ、トゥールーズ、アジャクシオ(コルシカ島)に次いで5番目。
鉄道や橋のような莫大なインフラ敷設費用がかからず大気汚染もないことから、新たな交通機関として注目されている。2029年までにはマルセイユ郊外のヴィトロール駅とマルセイユ=プロヴァンス空港をつなぐ路線が運行される予定だ。

しかし、地上40mの高さにあるため、安全面の問題や、電気モーターで動くために停電の際にゴンドラが宙吊りになって乗客が何時間も閉じ込められるのではという懸念もある。このCâble C1では故障の際には非常用のジーゼルエンジンに切り替えてゴンドラを最寄り駅まで移動させるシステムをとっているという。ゴンドラ内にはマイク、スピーカー、カメラ、警報ボタンがあり、問題が起きた場合は指令室と直ちに連絡が取れるそうだ。
エッフェル塔などは小さくても見えるし、夕日のパノラマを楽しむこともできる。通勤・通学のほかにも観光目的でも人気が出そうだ。(し)




