
マクロン大統領は1月28日、老朽化が問題になっているルーブル美術館を7~8億€と約10年をかけて改修する意向だと明らかにした。資金は国の拠出は極力抑え、入館料システム見直や、メセナなどでまかなう。
この発表のきっかけとなったのは、ルーブル館長のロランス・デ・カール氏が13日にダチ文化相に宛てたメモ。老朽化による建物の損傷、古い設備、一部の場所の冠水、冬は寒すぎ夏は暑すぎるという作品保管条件の悪化など、ルーブルの状態に警鐘を鳴らした。また、同館の労組によると、壁のペンキのはがれ、展示場や作品収蔵室の冠水、電気の故障など頻繁に問題が起きているという。問題個所の修復だけでも1億€が必要だが、たとえば昨年は2600万€しか費やされていないという関係者の発言も報道された。度重なる館長の警鐘に大統領がやっと腰を上げた格好だ。
キャパ以上の入館者数
大統領の改修計画の目玉は、まずルーブル宮東端のペロー列柱側に新たな入口を設けること。1989年築のピラミッド型の入口は年間400万人を受け入れる試算で造られたが、昨年の入場者は外国人が8割を占める900万人(コロナ前は1千万人)。この入口だけでは入場者をさばききれず、混雑が年々ひどくなっている。新たな入口の設計は国際コンペで決定し、竣工は2031年を目指す。また、人気作品の『モナリザ』はその他の作品の展示場とは別の場所に置き、この作品鑑賞のみの入場券を導入する。新入口とそれに伴う東端の「クール・ド・キャレ」の改修費におよそ4億€、老朽化した個所の修復と混雑解消対策の改修のために3~4億€かける予定だ。財源はできる限り美術館の入場料やメセナ、アブダビ・ルーブルのライセンス料などでまかなう。その一環としてEU市民とEU以外の外国人の入場料に差をつける入館料設定を2026年1月から実施するようダチ文化相に要請した(現行一律22€)。
「モナリザ」鑑賞は追加料金?
デ・カール館長は大統領の発言に「ルーブルにとって歴史的な決定」と喜び、財源は国民の税金ではなく、入館料やメセナ、アブダビ・ルーブルのライセンス料などでまかなうとルーブル自らの責任を強調した。また、『モナリザ』は独立入場券ではなく、追加料金にしたいと提言。ルーブル混雑の一要因である、その『モナリザ』だが、伊ロンバルディア地方政府の文化顧問が、ルーブル改修準備と工事の間、同地方は「伊の芸術と文化を最もよく代表する作品」を受け入れる準備があると発言し、物議を醸している。仏紙は1911年にイタリア人が『モナリザ』をルーブルから盗んだこと、美術品返還を求める団体が同絵画のイタリア返還を求める訴えを起こし、仏国務院が却下した経緯などを報道したほか、同絵画は、ロワール河流域にダヴィンチ晩年の住まいを提供したフランソワ1世にダヴィンチが売ったものだと解説し、仏の所有権の正当性を再確認している。(し)
