パリ市は5つのぶどう園を所有していて、そのうちのひとつが南部のジョルジュ・ブラッサンス公園内にある。毎年市民のために、ぶどうの収穫を体験するイベントを開催しており、今年は9月27日に実施。豊作だった昨年よりも3週間遅い収穫だ。
かつて15区のヴォジラール界隈にはぶどう畑の丘陵が広がっていたが、都市化とともに19世紀半ばに消滅。1982年に屠殺場跡が有名シャンソン歌手、ブラッサンスの名を冠した公園に生まれ変わった時に葡萄畑も復活した。1200m2と広くはないが、パリのぶどう栽培文化を今につなぐ貴重な場所だ。
植木ばさみとゴム手袋を支給され、さっそく収穫。ぶどうを傷つけないよう茎をちょんちょんと切ってバケツに入れる。難しいことは何もないが、中腰姿勢を続けるのは疲れる。味見をするとしっかり甘い。参加者の中にはモントリオールから来た旅行者もいた。「パリ市のサイトで情報を見つけて応募しました。パリにいるとは思えない楽しい体験です」。しかし、うっかり手を滑らせ自分の手を切った痛々しいご婦人もいた。何事も油断は禁物だ。
品種は主にピノ・ノワールとピノ・ムニエ。醸造後に瓶詰めされ「Clos des Morillons」という名のオーガニックワインとなる。毎年約250本しか作れず、翌年の9月のオークションに出品される。昨年は7170€、今年は5740€を売り上げ、15区の非営利団体に全額寄付された。(瑞)