情事のあとで。

  「私はブスだ」と開き直っている人でも、自分を美しく見せたいのが人情。しかし、悲しいかな、持って生まれてきたものは努力しても簡単には変えられず、別人になれたらと思ったりする。
 実際に別人となり、女性たちを手玉にとった男の話が、5月4日付のル・パリジャン紙にあった。09年から13年にかけて、彼は「アントニー・ラロッシュ」なる名前で出会い系サイトに登録し、65歳という年齢を37歳と偽った上に、ネット上で見つけた男性モデルの写真を、自分の顔写真として使っていた。巧妙なのは、女性とSMSで逢引の約束をするときに、「暗闇で会う」という条件を加えていた点だ。
 すぐに怪しまれそうなものだが、多くの女性が替え玉の甘いマスクに我を忘れ、男の家の敷居をまたいだ。ニースの警察が押収したコンピューターからは、25歳から50歳まで、実に342人の女性との交信記録、200人の赤裸々な写真が見つかった。
 だが昨年2月にある女性が、相手の顔が気になって情事の後に電気のスイッチを押し、すべてがご破算となった。男の醜態を目にした彼女は、警察に訴えた。実は以前にも男に対して同じような被害届けが出されていたが、裁判にはならなかった。しかし今回は、相手の同意なしに性行為に及んだ強姦容疑者として、裁きを受ける。
 顰蹙(ひんしゅく)を覚悟して言う。もし騙されたのが男性であったなら、警察は取り合わず、被害者も笑い種として済ましたはずだ。嘘を褒める気はない。だが口先で「人は外見ではない」と言いつつも美女の前では声色を変えてしまう私には、己の矛盾を見事に突いているようなこの男がなぜか憎めない。(浩)