コンペ部門で上映第1作目となった『怪物』
世界進出への扉となるカンヌ映画祭では、やはり毎年同胞の日本人監督の活躍が気になります。今回、コンペティション部門21本の中でトップバッターとなったのが、是枝裕和監督の『怪物』でした。
小学生の喧嘩がやがて大人を巻き込む「羅生門」風味の人間ドラマで、是枝監督にとっては通算7回目のコンペ参加に。彼くらいの大物になれば、早めにカンヌ入りして映画祭を存分に満喫したい、そんなリクエストを運営側に出しているのでしょうか。気になって監督に尋ねてみたら……。
「そんなリクエストなんておこがましいです!どういう順番になるかはお任せしていて、カンヌ側が作品にとってベストの日時を選んでいるんだと思います。(『怪物』は)きっと反芻されていく映画だと思っていましたから、早い上映も考えられるかと思ってます」との回答でした。
とはいえ、やはりカンヌは2週間の長丁場。自分の記憶ですと、後半に入ってきた作品の方がパルムドールを獲りやすい傾向がある気はします。リューベン・オストルンド監督はじめ審査員メンバーは、『怪物』をしっかりと反芻し、最終日まで長く心に留めておくのでしょうか。最終日(本日5/27)の受賞作発表に期待したいと思います。(追記 : 昨晩、コンペ作品の授賞式の一足先に、『怪物』はクィアパルムを受賞しました)。
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北野武監督の『首』、プレミア部門に。
カンヌのプレミア部門に登場したのは、あの「本能寺の変」の裏側を自由に解釈した北野武監督の『首』。公式会見後には、監督も俳優陣も大きな手応えを感じていた様子でした。出演者のひとりの西島秀俊さんは「何度か映画祭で上映に立ち会ってますけど、今までの中で一番素晴らしい上映だったと感動しています。観客の皆さんがもの凄く集中して面白いシーンは全部笑って、最後まで見ていただいて胸がいっぱいです」と語りました。
ただし、北野監督には「『菊次郎の夏』のトラウマ」があります。1999年にはコンペ部門に『菊次郎の夏』を出品し、大好評を博したのですが……。「『サマー(菊次郎の夏)』の時は、今日の四倍ぐらい凄かったもんね、終わった後は。永遠に拍手があって。帰ろうと思ったけど、最終日に何かくれるのかと思って待ってたら、何の音沙汰もなくて嫌だったな〜」と、苦笑いで20年以上前の思い出を語ってくれました。しかし今回は、競争のないプレミア部門、かつ信頼できる俳優仲間や奥さまに囲まれ、よりリラックスして映画祭に参加をしているように見えました。
さて、この『怪物』と『首』の両作品で、脇役ながら印象的なキーパーソンの役を担っているのが俳優の中村獅童さんでした。現代劇でも時代劇でも、シリアスでもコミカルでも、作品の世界観に自在に染まれる佇まいはさすがとしか言いようがありません。個人的には今回のカンヌMVP俳優さんに決定です。(瑞)