Passy界隈(16区)
中国人の父、イギリス人の母を持つ上海出身のディナ・ガオ(高醇芳)さん。文化大革命が吹き荒れる最中、1975年に香港のフランス総領事のすすめで渡仏してきた画家だ。「荷物は絵筆を詰め込んだスーツケースひとつ。自分の作品を売り払って飛行機の切符を買いました」。単身で遠い異国にたどり着いたが、芸術の国フランスは、到着したその日から自分の家のように感じられた。行動的な彼女は画家としてもすぐに頭角を現す。1977年に中国人女性として初めてフランスで中国絵画の個展を開催。1984年からは中国文化センターを立ち上げ、中国絵画やカリグラフィーを指導するようになる。
現在、彼女が住むのは「シックだけど住みやすさが魅力」というパリ西方16区のパッシーだ。1区や8区など、パリにはシックな雰囲気のカルティエはいくつかあるけれど、実際に住むのに必ずしも便利ではない。でもパッシーは落ち着いた雰囲気は残しつつも、スーパーやマルシェがあり買い物に至極便利。映画館や美術館も近く文化度も高く、他の町に出る必要を感じないのだ。ディナさんの住む通りは車の往来も少なく、典型的なパリらしい閑静な高級住宅街が広がる。だからテレビや映画の撮影も頻繁に行われるようだ。最近も自宅アパルトマンの下に突如電話ボックスが設置され、住民たちがパニックに。「あとから映画の撮影だとわかり、皆で胸をなで下ろしました。でも人騒がせよね(笑)」。
気がつけばパッシーに住んで30年。基本的な建築物はあまり変わらないが、パッシー通りのブティックの顔ぶれは変化が早い。「昔はショッピングも楽しんだけど、今はキリがないからもういいわ。それに忙しくって!」。それもそのはず、ディノさんはもうひとつ別の顔を持つ。実はもうすぐ彼女が代表を務める中国映画祭が開催されるのだ。「今年のおすすめは家族で鑑賞できるシネコンサートと、中国ドキュメンタリー映画のパイオニアSun Mingjingのオマージュ上映。日本人の方が多様な中国映画の世界を発見してくれたら嬉しいです」(瑞)
第8回パリの中国映画祭
10月29日〜11月14日まで
パリの映画館Max Linder、La Pagode、Le Lincoln、Les 7 Parnassiens、Les 3 Luxembourgで開催。
http://www.chinesefilmfestival.fr/
●Café Le Passy
パッシー駅近くの、7つの通りが交差するコスタリカ広場にある人気カフェ・レストラン。高級住宅街にしては値段と料理のバランスが良心的な価格設定で、テラスには常連客が。ディナさんはここでチョコとマンゴーのアイスをよく食べる。Wifi完備。月~土7h-02h、日8h-19h。
2 rue de Passy 16e 01.4288.3102
M°Passy
●Passy Plaza
GAPやH&Mなどおなじみのブランド、薬局、玩具屋、靴屋、時計屋、インテリアショップなどが密集するショッピング・モール。大型スーパーは21h50まで営業で、住民には便利。
ブティック月~土10h-19h30、スーパーモノプリINNO月~土9h30-21h50。
53 rue de Passy 16e M°Passy
●Musée du Vin
パッシー駅の階段を降りると、ひっそりと姿を現すのがワイン美術館だ。中世に修道院のワイン蔵として使われた石灰岩の採石場跡を利用。ワインに関する2千点以上の関連資料と製造器具などを展示している。レストランも併設。火~土10h-18h。
5 square Charles Dickens 16e
01.4525.6326 M°Passy
入場料:試飲付きで11.9€、
学生・シニアなどは9.9€。
ディナさんの描くネコ。
ディナさんの中国絵画や書の教室 3レッスンで90€+年間登録費30€ Association Culturelle Franco-Chinoise 問い合わせは01.4520.7409
Rue des Eaux