年末にミラをフランスに置いて一時帰国した。放射能汚染を心配するジルの反対があったからだが、決定的だったのは「パパが心配するからあまり行きたくない」というミラの言葉。てっきり本人は日本に行きたいのかと思っていたので意外でもあり、また少々寂しくも感じた。
十日間ほど滞在した東京は、表面上は以前と変わらぬ風景が広がっていた。しかし夜になると、宿泊したドミトリーの二段ベッドが揺れる度に一人恐怖を味わったりもした。単に下で寝てる人が寝返りを打っただけなのだが、毎回「地震だ!」とドキドキしたのは情けない。
現地では友人や家族と日替りで会ったが、震災への関わり方はみなそれぞれに違っていた。元同僚は岩手県でボランティアをして帰ってきたばかりだが、別の友人は沖縄に移住計画中だった。放射能汚染に関しても楽観派、悲観派では全く見解が異なる。だがそれぞれに説得力があり混乱してしまう。ミラの日本のいとこのお姉ちゃんは、ミラに会えないことを残念がりお手紙をくれた。「でもミラちゃんに、日本に遊びに来てねって書いていいのかわからなくって…」と言っていたのが、胸にこたえた。
パリに戻ると、案の定ミラは宴会続きで顔が丸くなっていた。高級な柔軟剤の匂いに包まれて別人ぽくも感じたが、「日本語忘れてないよ」と言ってきたので、やはり我が子であった。(瑞)