「フランス的思考」石井洋一郎:著
近代的な自我を確立したパスカル、デカルト、ルソーなどの合理主義を標榜すべきフランスで、なぜサド、フーリエ、ランボー、ブルトン、バタイユ、バルトといった非合理な思想を体現した「野生の思考者たち」が生まれたのか。それら思想の地下水脈を描くことで、逆に照らし出される近代ヨーロッパ文明の礎石である合理主義のゆるぎなさを知らされる。
情緒的に流れがちな日本語で、幾多のオマージュや幻想に囲まれたこれらの人物にたどり着き、読み手に理解させる優れた編集技量と明瞭な論理の展開は特筆もの。「考える」愉悦にひたり、知的興奮を味わいたい欲張りな読者には格好の1冊。
中公新書2087 760円+税。