武装勢力を前に異国で苦渋の決断を迫られるフランス人修道士たち。映画『Des hommes et des dieux』は、カンヌ映画祭グランプリ受賞作とはいえ、テーマも重く演出も禁欲的。だから観客数300万人越えは想定外の事件だ。ここで監督のグザヴィエ・ボーヴォワについておさらいしよう。
北部パ・ド・カレー県出身。高校生のころ、カイエ派の大批評家ジャン・ドゥーシェが当地で開いた上映会に足を運び映画に目覚める。監督を志し高校はドロップアウト。パリに出るも名門イデックの入学試験に失敗。気を取り直し助監を務めた後、92年に北部が舞台の『Nord』で長編デビュー。本作は心の師匠ドゥーシェに捧げられた。続く『N’oublie pas que tu vas mourir』も自身が主演、数々の賞に輝く。05年にはナタリー・バイに主演を譲り、刑事ドラマ『Le Petit Lieutenant』で新境地を開拓。並行して俳優業も続行し、『ポネット』や『夜風の匂い』などに出演。『Des hommes et des dieux』は5年ぶりの監督作。日本を含む海外50カ国に配給予定で、米アカデミー外国映画賞も有力候補。肉体の老いはすべて貫禄に変えながら、4本目にして堂々の存在感を放つボーヴォワ監督。もはや『Nord』時代の青ざめた田舎青年の面影はどこにも見当たらない。(瑞)