映画の中のハマム。
● 『Halfaouine』
これから初めてハマムという人にも、すでにハマム体験済みの人にもおすすめしたい作品が、チュニジアのフェリド・ブゲディール監督の『Halfaouine』(1990)。ハマムが生まれた地域の色合いや音楽に、心地よく揺られることができる。
舞台はチュニスの庶民的な地区。男たちも女たちも勢いよく大声をあげて話し、泣き、笑っている。主人公は思春期から大人へなりかけの少年ヌラ。年上の仲間にそそのかされ、純朴無垢な少年を装ってハマムに潜入して近所の美女たちの体をしげしげと観察したりする、困った子供である。ただ、「なんだ、ただの悪ガキの話か」と思うことなかれ。この勇気ある悪ガキの目を通して、私たちはハマムの熱気と蒸気の中に流れている、優雅で緩慢な時間をちょっぴり共有することができるのだから。日常のすべてのごたごたから解き放たれ、一心に体と心を清めることができるハマムは、女たちにとって一種の聖域のようだ。