17年前の6月21日。年に一度の音楽祭で恋に落ちたロッカーと年上の彼女。フィリップさんのバンドにカトリーヌ(略:カティ)さんの従兄がいたのがきっかけだ。演奏が終わり、カティさんは、タバコを吸いに出たフィリップさんを追いかけ、思わず彼にキス。約1年後、娘が誕生した。「すべて直感。迷いなんてなかったわ」とカティさん。現在16歳になる娘のクレマンティーヌ、「スシ(寿司)」という名の猫と、ベルヴィル公園を臨むアパルトマンで暮らしている。 ボーカリストとしてバンド活動を続けながら、生活のため郵便配達をするフィリップさん。彼の朝は早い。6時15分から13時まで勤務。一日のうち残りの時間はたっぷりある。お昼寝して、買い出し、夕食の支度は彼の役目だ。一方カティさんは小さな会社の秘書である。7時半に家を出て19時に帰宅。いつも本音を言いあう二人だから、いさかいは絶えないがすぐに終わる。例えば娘の育て方。「私はつい心配で過保護になってしまう」という彼女に対し、「僕はもっと融通がきくかもしれない。夜の外出も大抵OKするし。娘には自分自身で学んでほしいんだ」とフィリップさん。「それにカティは母親がいない幼少時代を過ごしたから、つい甘くなってしまうよ」と語る。 10年前、カティさんは血液癌にかかり、なす術がないと宣告された。奇跡的に助かったが、2年後、肺から菌が入り合併症を起こす。5年の間、彼女は入院生活を続けた。その間、フィリップさんと親族はつきっきりで看病した。彼女が2度目の昏睡(こんすい)状態に陥る前夜、二人は誓い合う。「治ったらすぐに結婚しよう」。そして生還した4年前、20区の市役所で式を挙げた。当時娘は12歳。以来、フィリップさんはお酒とタバコをきっぱり断ちきる。「舞台に上る時は緊張を抑えるため、アルコールやドラッグに走るミュージシャンが多いけど、緊張がとれるどころか、声も脳もつぶしてしまう。僕はあの時ストップをかけたんだ」。現在、妻は娘を連れて、夫のライブに足を運ぶのが楽しみだ。(咲) |
二人の友人の画家フィリップ・ ショミロンさんが一枚だけ譲ってくれた絵。 これから相手に期待したいことは? 「一緒に老いること」(フ) 「定年に達したら田舎に家を買って過ごしたいわ」(カ) 前回のバカンスは? 夢のバカンスは? 最近、二人で行ったイベントは? お気に入りのレストランは? カップルとしての満足度を5つ星でいうと? |