日刊紙パリジャンのCMの中で、我らジャポネにとって印象深いのは〈エッフェル塔編〉か。日本人カップルにエッフェル塔の場所を尋ねられたパリジャン男が、わざと反対方向を教えるという自虐的なスケッチ(寸劇)。パリジャン紙は全国版オージュルデュイ・アン・フランス紙も足すと約50万部を発行。フィガロ紙やルモンド紙を引き離し有料日刊紙としては売上げナンバーワンを誇る。本日はパリ郊外サントゥアン市にあるこの人気新聞の会社見学に参加した。 集合時間は22時45分。まずは社員が帰宅後の編集室で、ガイドさんにパリジャン紙の歴史をレクチャーしてもらう。同新聞は1944年の8月22日、パリ解放三日前に誕生した。当時の名は時代を反映して『Parisien Libre』。その後は58年にカラー版、60年に地方版、66年にタブロイド版を発行しながら進化。86年にはようやく現在の名前「パリジャン」に。このころに「記事は短めでわかりやすく」、「イラストや写真は大きめ」という指針を掲げたことが、現在の大衆紙王座の地位を用意したといえよう。 編集室のあとは印刷の現場へ。アルミニウムの原板が作られる部屋ではオフセット印刷についてお勉強。インクの匂いが漂う輪転機のあるスペースでは、すでに朝刊が目にも止まらぬ早さで印刷されている。できたてホヤホヤの新聞は、ジェットコースター顔負けの急斜面があるレールに乗って走る、走る…。そしてだだっ広い倉庫に入ると、ふいに前方からは無人の大きなマシーンが、印刷用紙を運びながら近づいてきた。レーザー光線で自動操作されているのだ。作業員もまばらな工場で無人ロボットたちが淡々と作業をする様子は、どこか近未来の廃墟を思わせる。慌ただしい社会を映し出す新聞は、意外にも世間と隔絶された孤独な異空間を通ってやってくるのだった。(瑞) パリジャン紙www.leparisien.fr/ 見学申し込みはwww.tourisme93.com/
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