「彼女の優しい瞳、もろくはかない若さに惹かれた」。まるでロメール映画のセリフのようだ。時は1997年、人懐っこい笑顔のステファンさんは、ロンドンから大阪にやって来た仏語教師。美和さんは、語学学校に通う言語学専攻の学生。互いに気になる存在だったが、決定打は彼がサンフランシスコへ赴任する直前。1年半の遠距離恋愛の間、彼女は彼の元へ3度も足を運んだ。「恋人として最もいい時期だったのがこのころかな」
2001年、東京で再会し、以来8年間、生活を共にした。ところで二人の会話は仏語のみ。「彼は教師としては素晴らしいの」と微笑む美和さん。流暢(りゅうちょう)に読み書き、話す。しかし、東京のフランス人社会にいた彼の日本語は、彼女のそれには及ばない。そして次第に焦りを感じるようになる。「いつまでたっても彼女に依存する状態は続けられない。まるで子供のような自分がイヤだったから」1年前、揃ってパリに移住した。
サンフランシスコのゴールデンゲート
ブリッジの足元にあるベイカービーチ。
二人の関係を決定的なものにした二人にとっての聖地。
ワーキングホリデービザを取得した彼女は、すぐに日系の新聞社で仕事を見つける。彼は教師として働き始めたが、まだ安定した生活には程遠い。仮住まいが続く中、彼女のビザの期限が迫ってきた。「私自身は保守的な親のことを思うと、結婚関係を結びたいのだけど…」。しかし彼の哲学に、結婚の言葉はない。そこで二人がとった妥協策はパクス協約だ。「僕らの関係を公式にする目的だけど、結婚はしたくない。僕は現実がうまくいかなくなったり、平凡過ぎたり色あせてくると、逃げたくなるんだ」。一方彼女はこう語る。「結婚を拒む姿勢には、責任逃れ、簡単に別離をたくらむズルさを感じるわ。今後、子供もつくるなら、結婚するのが前提」。だが元をただせば二人の出会いは、現実逃避をするピーターパンが日本に旅立ったパラドクスに始まる。今は移住して1年余り。お互いを気遣う余裕がない程、自分のことに精一杯だが、ここは勝負の時。先日、二人は14区に新居を見つけたばかりだ。第二のスタートを切るのは、もうすぐ!(咲)
これから相手に期待したいことは?
「妥協点とバランスを見つけていくこと」(ス) 「エピキュリアン(快楽主義者)から人生のオーガナイザーになってほしい」(美)
前回のバカンスは?
「昨年末、ひたすら海が見たくて北部のトゥケへ。凍えるような寒さの中、毎日ビーチを歩いたの」(美)
夢のバカンスは?
「ポリネシアやモルジブ島への船旅」(ス) 「冬だったら海辺の超一流豪華ホテルでリラックス。夏だったら南の島で、海とヤシの木さえあればそれでいい」(美)
最近、二人で出かけたイベントは?
「ゼニットで、コメディアンElie Semounの『Merki… 』というワンマンショーだよ」(ス)
お気に入りのレストランは?
St Germain Mandarin ( 5 rue Monfaucon 6e 01.4329.07.14)
「高級店でもないのに、洗練されていて、サービスも価格も良心的。どれを頼んでも美味しいアジア料理店」(美)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★1/2「カップルとして強靭な絆を作りあげるには、まだ余地があるから」(ス)
★★「今は互いを思いやったり、歩み寄る努力を怠っているから。今後改善していきたいな」(美)