「僕たちは同じ階層(世界)にいながら職業は違う」。統計を取ったわけではないが、フランスでは同業者間の恋愛が多い。似たような環境の人が、同じ興味を分かち合う。ビデオ作家のヴァレリー・ムレジャンさんと哲学者のベルトラン・シェフェールさんは、巡り会うべくして巡り会った。10年前、某出版社の廊下ですれ違い、自然と言葉を交わす仲に。当時、小説を出版予定だった彼女と、ルネサンス期の哲学本を翻訳していた彼。その後、各自小説を出版しながら、短篇映画のシナリオを共同執筆。「労働は人生の一部で、それを共有することは人生を分かち合うこと」とべルトランさん。「簡潔なのに終わったら3~4倍の厚みを持つもの。人生の段階の奥行きに興味があるんだ」と続ける。ヴァレリーさんの作品には、必ずありきたりな行動のパラドクスが描かれる。アンチ感情派。「深さ」を求めてルネサンスまでさかのぼる彼と、「形」を変えて人間考察を続ける彼女。 12区のアリーグル広場近くの住まいは、だだっ広いサロンの両端に、ぽつんと各自の机がある。仕事場兼自宅なのに、まるで生活感がなく殺風景な印象。共にタイトなシャツにパンツの装い、ミニマルなアニエス・ベーの世界から抜け出てきたような二人だ。「平日、週末というような時間的感覚はないわ。夜の外出? 展覧会や観劇、映画に行くのは、日常の延長よ」とヴァレリーさん。共に物静か。プライベートな質問はさらっとかわす。ありふれた日常には興味がない様子だ。二人が雄弁に語るのは、仕事やセオリー。同じ方向性をもったインテリ同士だが、7年間の共同生活でケンカしたのは4回だけ。 偶然ながら二人の道のりは交差している。7年前、ローマ賞を受賞しヴィラ・メディシスに滞在したヴァレリーさん、今年はベルトランさんが選ばれた。そして来年、二人揃って京都のヴィラ九条山に派遣される。共に新進芸術家を海外に送り、創作活動を助ける制度。京都では清少納言を研究し、二人で映画にする予定だ。(咲) これから相手に期待したいことは? 前回のバカンスは? 夢のバカンスは? 最近、二人で出かけたイベントは? お気に入りのレストランは? カップルとしての満足度を5つ星でいうと? |
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